ファイナンス 2024年3月号 No.700
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*18) 税務データを活用した共同研究の概要については、こちらの記事をご覧ください。 「行政データの利活用とは〜税務データ共同研究関係者に聞く〜」ファイナンス2023年7月号,pp.64-71https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f10_21.pdf伴:ありがとうございます。最後にお話しいただいたアウトリーチの方法も含めて、先生方がご苦労されて作ってくださっているものをより多くの方に読んでいただけるような工夫をこれからも考えていきたいと思います。今後フィナレビで取り上げるべきテーマについて、もし何かお考えがあればお伺いしたいと思います。林:2000年代中頃の地方財政改革については既に多くの研究が生み出されてきましたが、それを総括するような特集があると良いですね。既存研究を俯瞰することは大切で、それによって何がわかったか、そして、何がわかってないかをしっかり捉えることができますし、それと同時に、それら過去の研究の問題点を浮かび上がらせることもできます。また、プラスアルファの部分として、未だ答えられていな問いや命題に対しては、新しい実証分析もできるはずです。また、データを使った経済学的な実証分析も当然ながら必要ですが、それだけに限らず多角的な分析を行う事で2000年代中頃の一連の地方財政改革を評価する研究ができれば良いと思います。加えて,既にフィナレビの企画が進行中と伺っていますが、現在進行中の税務データを使った共同研究*18のアウトプットを何らかの形でフィナレビに掲載することも重要と思います。赤井:国の視点・地方の視点の両方とも重要で、今後地方がどうなっていくのか、国がどうなっていくのかといったところにはとても関心があります。先ほどの持続可能性のような話なのですが、日本にとってやはり一番の問題点は人口減少と少子高齢化だと思います。少子化対策にお金をかなり使っていますが、効果が現4.今後取り上げるべきテーマについて大川:赤井:citationがきちんと評価されればフィナレビの地位も上がっていくと思うのですがね。ただどうしても査読雑誌なのか、英文なのかということが重視されてしまっている。本当は日本語文献でも引用が多ければ業績として高く見るという文化があっても良いですよね。林:そうですね。話は少しずれますが、フィナレビに掲載された論文はPPRにその英語版が出版されますが、PPRは、その編集やアウトリーチの方法を工夫することで様々なポテンシャルを発揮できる媒体であると思います。既にご苦労されていると思いますので大変言いにくいことですが、現在、ウェブサイトに掲載されているPPRの論文を海外の読者に対し、積極的、かつ広く広報していただけるような仕組みがあると執筆者のモチベーションも上がるかもしれません。もっと広い海外の読者にアウトリーチする工夫をしたり、タイプセットや装丁を含め、専用ウェブページに海外の出版社並みの見やすく操作しやすい意匠を用いたりして、読み手のコストを下げることも重要だと思います。また、他の財務総研の英語のアウトプットも対象とした、海外読者用のメールマガジンがあると良いかも知れません。財務総研のリソースを駆使して刊行されているフィナレビの特集のひとつひとつには、通常私たちが書店で購入する内外の典型的な学術編著本の場合より多くのリソースが注がれていると思います。したがって、我々責任編集者がちゃんとしていれば、市販の編著本にも劣らない、むしろ、それより優れた成果を提供できるはずです。そのような成果を年間約4回も、しかも無料で社会に提供しているわけですから、とても立派な事業だと受け止めています。このように学術的にも社会的にもとても意味のある事業であることを受け止めていただいて、そのポテンシャルを最大化できるように、更に素晴らしい仕組みを築き上げていただけると幸いです。 86 ファイナンス 2024 Mar.

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