*10) 平成17年第3号(通巻第77号),特集「財政支出の費用便益分析」 https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8379094/www.mof.go.jp/pri/publication/■nancial_review/fr_list4/fr77.htm3.財務省職員に伝えたいこと、印象に残っている特集号について大川:は、それに付されている「編者」の名が形骸化している場合が少なくないのですが、そのような事がないよう意識したつもりです。赤井:内容に関して、思っていたのと違う内容や全然新しさもないといったことでは問題なので、私は全ての章に関して、問題意識や新規性、実証分析であればデータ、検証仮説、分析手法、結果からのインプリケーションなどについて、初めの段階で執筆者から全部聞いてエクセルシートに統一的に並べて、全ての章において新しさがあり、データや手法や仮説も面白いというようなところまで詰めてからスタートしました。あとは期限を守ってもらうためのスケジュール管理も丁寧にしました。財務総研が主催するフィナレビの正式な会合以外にも、執筆者で集まって進捗状況を確認し合い、発表し合ってコメントし合う場所も作りました。その辺りが工夫した点です。伴:赤井先生が各論文の内容を整理して下さったエクセルシートは当時私も拝見していましたが、特集号の全体像がよくわかり、事務局としてもとてもありがたかったです。また、本来事務局が担うべき進■管理にまでこまやかに気を配っていただき、大変助かりました。フィナレビの主目的として財務省の行政に資するようなリーダブルでクオリティの高い論文を掲載するということがあると思いますが、財務省職員に先生方が伝えたい思いやメッセージがありましたらぜひ教えていただきたいと思います。林:学術で議論されていることが格が上ということでは全くないのですが、特定のテーマについては、通常、定型化された学術的な考え方があります。そのような考え方は必ずしも一つではないのですがある体系を成しており、そういった知識の体系を通して、皆さんが毎日対処なされている課題を見ていただけると、新たな発見があるかもしれません。日々のお仕事で大変かと思いますが、その先に広い世界があるというか、皆さんのお仕事が重要なところに繋がっているというのを意識していただければと思います。そして、フィナレビの編集においては、そのような皆さんのお仕事に関する良い意味での再認識に繋がるような成果物を提供することで、お役に立てればと思います。赤井:林先生のおっしゃったことと近いと思いますが、財務省の皆さんは、実務に関してはプロフェッショナルですが、加えて、政策を作っていく上でアカデミックな面から物事を見る時にどのような見方があるのかを知っていただくことは価値があると思います。まさに、それは、林先生がおっしゃった「考え方」です。経済学でも政治学でも法律学でも同じだと思いますが、物事の考え方、結果の導き方、つまり、その結果が出てくる背後にあるロジックです。経済学でいうとミクロ経済学やマクロ経済学といったようなこれまで蓄積されてきた「考えるツール」のような体系を、難しい分析の手法は別としても、フィナレビから学んでいただければ、フィナレビの意義は大きいと思いますし、それを政策決定などに生かしてもらえたら日本の財政課題の解決にも貢献すると思います。伴:フィナレビでは財政に関するテーマを最近もいくつか取り上げていますが、印象に残っている特集号があれば教えていただければ幸いです。林:一つは、先ほど触れた政府間財政に関する特集号(82号)ですが、二つめは、これも若干古くなりますが、その号と同時期に公刊された費用分析に関する77号*10でしょうか。この号の執筆者の人選についてお手伝いさせていただいたという意味で、記憶に残っ 84 ファイナンス 2024 Mar.
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