[プロフィール]●林 正義 東京大学大学院経済学研究科教授(写真右上)1998年にクイーンズ大学(カナダ)から経済学博士号を取得。その後、明治学院大学講師、財務総合政策研究所総括主任研究官、一橋大学助教授、東京大学准教授などを経て現職。税制、社会保障、地方財政を主な対象として研究。2006年より財務総合政策研究所特別研究官、2020年より2023年まで日本財政学会代表常任理事。●赤井 伸郎 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授(写真右下)1998年に大阪大学から経済学博士号を取得。その後、神戸商科大学経済研究所助教授、大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授などを経て現職。公共経済学、公共経営、地方分権、公共ガバナンスを主な対象として研究。1998年より財務総合政策研究所特別研究官。2023年より日本財政学会代表常任理事。[聞き手]●伴 真由美 財務総合政策研究所総務研究部主任研究官(写真左上)2013年財務省入省。主税局勤務、英国留学等を経て、2020年夏より現職。フィナレビの編集事務などを担当。●大川 隼人 財務総合政策研究所総務研究部研究員(写真左下)2015年野村證券株式会社入社。鹿児島支店、成城支店、野村資本市場研究所を経て、2022年10月より現職。フィナレビの編集事務などを担当。*5) 黒田東彦(1971)「これからの経済政策はどうあるべきか」『ファイナンス』1971年11月号,pp.74-78*6) 「黒田東彦 私の履歴書(8)固定相場崩壊」,日本経済新聞,2023-11-08,朝刊,p.46Part 2. 林正義先生・赤井伸郎先生インタビュー河合:まずは、エビデンスに基づいた、政策に役立つ質の高い研究を今後も続けていただくことを期待します。また、財務省には、省内でも意見が分かれる問題や異端とされる考え方があると思いますが、そういったことも議論していって欲しいです。黒田東彦前日銀総裁は、ニクソンショック後の1971年11月に円の変動相場制への移行が望ましいという趣旨の論文を財務省の広報誌『ファイナンス*5』に投稿し、論文が掲載されましたが、日経新聞の「私の履歴書*6」の中で、よく財務省は掲載を許してくれたと書いています。当時は省内でも円をフロートさせるという考え方は異端であり、論文を掲載することはとても画期的だったはずです。言うまでもなく、円のフロートは1973年以来、続いています。フィナレビにも同じような役割を果たしてもらいたいです。また、財務総研の国際的なプレゼンスをもっと高めることも期待したいです。日本の財務省はアジアの財務省の中でリーダー的な存在なので、その研究所である財務総研がアジアひいては世界のリーダー的な研究機関になるという野心を持って欲しいということです。やり方はいろいろあると思いますが、私がアジア開発銀行研究所(ADBI)所長の時には、欧米を含む著名な研究者を集めて、ディスカッションペーパーを多数出したり、何度もカンファレンスやシンポジウムを開いたりと、アウトプットを出し続けました。その結果、ADBIの国際的な認知度を大きく高めることができました。吉野:私も河合先生の後任として、ADBI所長をやらせていただきましたが、河合先生の尽力により、既に世界でも有数の公的機関のシンクタンクになっていました。財務総研のプレゼンスを高めるやり方の一つとして、世界各国の研究者を呼んでカンファレンスを開くのはいいと思います。今はオンライン形式で海外の研究者でも容易に招待できますから。財務総研に期待しているのは、政策のレビューを今後もしっかり続けていくことです。例えばコロナ時にどのような財政政策が行われ、その効果はどうだったのか。これは財務総研にしかできないことで、将来ショックが起こった時に必ず役立ちます。また、フィナレビの中で、世間一般で言われていることとは異なる知見を扱うことも多々あると思いますが、その際、どこから違いが出てくるのか、なぜ一般では間違って認識されているのか、きちんと書いていただくと、とても価値のある論文になると思います。林先生・赤井先生は、2021年から編集審査委員を務められており、それ以前からフィナレビに多数の論文を執筆されています(林先生は計9本、赤井先生は計13本)。 80 ファイナンス 2024 Mar.
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