ファイナンス 2024年3月号 No.700
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(3)メンターの重要性(キャリアを導く者)(4)スポンサーの重要性(キャリアの支援者)10.今後の課題一番対応しにくいのは、優しい上司が思いやり的に「こういうのをやらせたらかわいそうかな」とか、「そういうようなことで女性にあえて負荷をかけないです」といった慈悲的なアンコンシャス・バイアスです。それに対して何か指摘すると、「思いやりについて意見するなんて性格悪いんじゃない?!」と周囲から逆に非難されることがありますよね。そのため、多くの人が無言を選びます。だからこそ、何がアンコンシャス・バイアスを生むのかについての啓発が非常に重要となるのです。先ほど申し上げたインプットのところです。私が経験したインプットの期間は、M&Aの仕事が非常に有益だったと思っています。これにより、経営者としての道が開かれたという一面があります。また、グループ内で様々な部署に異動する中で、流通政策の仕事を担当したことも、貴重なインプット期間になりました。各ステージで適切なメンターがいまして、それぞれのメンターから「こういうことやってみたら」と、タイミングよく示唆を受けることができたのは、非常に重要だったと感じています。最近ではメンター制度を導入する企業が増えていますが、自分から「この人に教えてもらいたい」と思う人に師事することを推奨していってほしいと思います。「ガラスの天井」や「ガラスの崖」概念がありますね。私のように業績が危機一髪みたいなときに女性を昇進させることを「ガラスの崖」と呼ぶことがあります。しかし、そればかりではよくないので、様々な状況で女性を登用していこうと取り組んでいます。台湾現地法人において、副総経理を務めていた女性の事例があります。彼女は小学校と幼稚園の3人の子供を連れて、夫だけ日本に残して台湾に駐在したのです。もともと研究職で入社した彼女ですが、経営管理の業務をしっかりこなしました。台湾では、小さな子供を1人にしてはならないなど、様々な法律があります。そのため、ベビーシッターなどのサポートの提供を徹底することが絶対に必要になります。また、現在、財務グループリーダーを務める女性がいます。彼女は元々一般職として入社しました。一般職が廃止される時に、管理職試験を受けるよう勧め、寄り添いつつも徹底して指導しました。その結果、彼女は現在、弊社の財務を効率的に運営するグループリーダーとして活躍しています。(5)ジャングルジム・キャリア志向次はジャングルジム・キャリア志向についてです。長らく会社に勤めていますと、人生のステージが変わることがあります。結婚や出産、介護、あるいは自身の病気と闘いながら働くといった事態が起こることも少なくありません。そのようなとき、いわゆる昭和型の企業で、梯子型の一本道のキャリアを競うようなやり方を採用すると、ライフステージの変化に対応するのが難しくなります。何か問題が起こったときにメンタルを病んでしまったり、再び挑戦する機会を逃したりする可能性が高まります。ジャングルジムには多くのバーがありますが、これらは自身のキャリアを形成するためのさまざまな支柱と考えることができます。先ほどのインプット・アウトプットを通じて、どのバーを重視するかを決め、一本道のキャリアだけに頼らず、複数の支柱を持つことが重要です。ゴールイメージは一つだけに限らないということが大切です。それぞれの人には、自分に合ったゴールイメージが必ず存在します。自分が目指す姿を常にイメージし、その目標に向かってどの道を進むべきかを考えることが、ジャングルジム型のキャリア形成では可能です。病気になったり、出産や育児、介護といったライフイベントがあったりする場合でも、一時的に別の道を進むことも選択肢の一つです。そして、その後で元の道に戻ることも可能です。一本道で行くとなかなか息詰まることも多い中で、ぜひ、この考え方を取り入れてみたらいかがだろうかと思います。また今、人材の流動性が高いですね。キャリアの流動化もジャングルジム型のキャリアであればやりやすいのです。最後に、今後の課題について申し上げます。ジェンダーギャップを解消し、DE&Iを推進する 74 ファイナンス 2024 Mar.

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