ファイナンス 2024年3月号 No.700
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令和5年度職員トップセミナーファイナンス 2024 Mar. 738.アサヒグループにおける自身のキャリア9.ジェンダーバランス適正化に向けて(1)ジェンダーバランス適正化のためにぎ、積極的に取り組んでいきたいと思っています。内閣府が「ダイバーシティが非常に企業の収益につながる」というデータを出しており、これは良いデータだなと思うのですが、その一方で経産省が「多様化が進んでも、インクルーシブな支える行動、例えば柔軟な働き方を認める、といった支える行動をしないと、逆にマイナスの影響が出てきますよ」という面白いデータを出しています。ダイバーシティは、インクルーシブの素地がないとえらいことになりますよ、ということであり、これは素晴らしいデータだと思いました。この図をご覧なったことありますでしょうか。平等=イコーリティ(EQUALITY)と公平・公正=エクイティ(EQUITY)との違いは何かということなのですが、元々背の高さが違う人たちに同じ高さの踏み台を与えるという対応について考えてみます。平等というのは同じ高さのものを与えることになりますが、背の低い人にとっては、それを与えられても塀越しの景色は見えないのです。5.性別役割のアンコンシャス・バイアスの存在「女性はこうすべし」、「男性は家庭を支えて一人前」、といった性別役割の考えはありますよね。私も親からそういう教育を受けました。性別役割の考えについては韓国や中国も同じですよね。この独特のアジアで培われてきた性別役割の認識、これがアンコンシャス・バイアスだと思うのですが、ここを打破していく、ここに時間かけて取り組む必要があると思います。6. ダイバーシティ実現だけでは却ってマイナス効果も7. 機会に対して公平・公正(EQUITY)を確保これに対して、エクイティというのは挑戦できるチャンスを公平に与えるということです。スタートラインが一緒じゃない、そこに基づいて、例えば背の低い人には2段踏み台を与えてあげるのです。これは別に優遇しているとかではなく、挑戦できるチャンスを与えるだけで、そこから先は自分次第なのです。ダイバーシティを推進するためには、エクイティが必要不可欠であり、さらにそれを支えるインクルーシブな環境も必要です。弊社では、このエクイティについて積極的に取り組んでいます。課長に昇進してから、私はグループ内の様々な部署に異動しました。業績が好調な時期は、男性主体の従来踏襲型組織が続きますが、改革が必要となる局面では、異なるタイプの人材が求められます。私は、そのような局面で様々な部署に配置されてきたと思います。例えば、アサヒ飲料が2期連続で赤字となり、業績回復が求められる局面や、アサヒグループ食品の主力ブランドであるミンティアが厳しい状況にあるため、再成長を達成しなければならないといった危機的な局面での異動がありました。後ほど申し上げますが、インプットというのも重要で、キャリアチェンジする際は特に必要なものと考えています。ジェンダーバランスの適正化には、「アンコンシャス・バイアスへの対応」、「メンターとスポンサーの重要性」、「インプット・アウトプットのスパイラル型キャリア形成」、「ジャングルジム・キャリア志向」が重要です。(2)アンコンシャス・バイアスへの対応まず「アンコンシャス・バイアスへの対応」についてです。東京大学の2019年の入学式での上野千鶴子さんの祝辞が大変有名になりました。アンコンシャス・バイアスについてズバリお話をされていて、大変感銘を受けました。性差別的なアンコンシャス・バイアスは想定しやすいので、まだ対応しやすいですが、

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