B. アサヒグループにおけるダイバーシティ(DE&I)の意義(5)内外環境変化との見極めと対応1.ダイバーシティ推進の目的2.女性の役員・上級管理職に占める比率3.エクイティ&インクルージョンも必要4.実質的マネジメント職に就く女性を増やすそこで私が思うのは、日本ではインクルーシブ、いわゆる包含して組織に受け入れる素地がもしかしたら弱いのかなと。どんなに上級の管理職をいきなり増やしたり、社外から連れてきたりしても、根本的には何も解決しないと思います。現場で実力を発揮する女性の中間管理職をどのように育成し、登用するかが重要です。これらの女性中間管理職が後にメンターやスポンサーとなり、自然と良好なサイクルが生まれると考えています。私たちの会社としても、この点に力を注の手法を用いることで、現状と未来像のギャップを明確に把握することができます。このギャップを通じて、成長戦略をどのように進めるべきか、例えばオーガニックな成長を目指すべきか、それともM&Aなどのインオーガニックな手法が必要かなどを判断することが可能になります。このギャップの把握は、私たちの成長にとって非常に重要な要素であると考えています。弊社はBLC(ビジネスライフサイクル)において、連続的な成長を達成するために、ちょうど今、組織全体を変革するトランスフォーメーションの段階にあります。現在、非常に環境変化が激しく、特にロシアとウクライナの問題以降、コストインフレがものすごいですね。これまでは売上高と利益のピークアウトがほぼ同時期に訪れていましたが、コストインフレの影響でそのタイミングにずれが生じています。利益のピークアウトの方が早いのです。この利益のピークアウトにいち早く手を打つためにビジネスを適応させることが必要となります。ここを見極めるのが肝です。高収益を維持するための重要な要素であると考えており、現在、その取り組みを進めています。ここまで、ビジネスにおける「自分ごと化」ということでお話ししました。ここからはダイバーシティのお話になります。グローバル化が進み、弊社グループのように従業員の半分以上が外国籍となると、女性の活用だけでなく、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まることから、ダイバーシティ化の推進が必須となります。グループ内で多様な意見があることが、高付加価値の創出や業績向上につながるという認識は、全員が共有しています。そのため、この点を確実に実現するための施策を進めているところです。ちょっと驚くデータだと思いますが、アサヒグループ内における女性の役員・上級管理職に占める比率は約27%で高い状況です。2022年の時点で国内事業会社の平均が10%弱であるのに対して、弊社では約28%と海外事業会社レベルです。アサヒグループの海外部門を見ると、欧州20%強、オセアニア30%強、東南アジア50%強ということで、いかに海外では女性の役員・上級管理職比率が高いかが分かります。アサヒグループの国内平均が10%弱となっていますが、2030年までにこの数値を40%に引き上げるための取り組みが進行中です。グループ内では研修を含めて様々な活動をやっていますが、それは女性だけでなく、その上司や男性も参加することが重要です。DE&Iという言葉、もしかしたら初耳という方もいらっしゃるかもしれませんが、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(Diversity、 Equity &Inclusion)を指します。これらは、単にダイバーシティだけでは駄目ですよ、エクイティ&インクルージョンも必要ですよ、という意味を持っています。エクイティは公正とか公平、インクルージョンは包含ということですけれども、ジェンダーバランスを適正化するためには、これらの要素がそろっていなければ、現代社会では難しいのです。政府の「女性版骨太の方針」というものがありますが、この10年で女性の取締役が5.8倍になったことが示されています。その主な要因は女性の社外取締役増加ということですが、いろいろ頑張って5.8倍になったのはすごく立派だと思うのです。でも、まだまだ非常に低い状況です。 72 ファイナンス 2024 Mar.
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