令和5年度職員トップセミナーファイナンス 2024 Mar. 693.アサヒバイオサイクルの社会的存在意義4.アサヒバイオサイクルの3つの事業ドメイン(1)アサヒグループの「環境ビジョン2050」が約60か国となっています。事業成長の伸びしろがまだあるということです。弊社の社員の約35%は外国籍であり、売上の構成比をみると、北米が主流で約40%、日本が約28%、そして、欧州、中国、アジア、南米とバランスよく分散している形になっています。弊社の存在意義についてお話しします。これは世界の人口動態が大きな要素となります。2050年には人口が100億人に達すると予測されており、さらに2030年前半には新興国のGDPが先進国を上回るとされています。そうなると、2050年には少なくとも現在の1.7倍の畜産物と1.5倍の穀物が必要になると試算されており、食料が完全に足りなくなると考えられます。弊社のビジネスはまさにこの問題の解決に寄与することができます。食料問題だけではなく、資源問題にも取り組んでいます。これには水資源の問題や、製造過程で生じる副産物や廃棄物の再資源化が含まれます。さらに、環境問題や気候変動にも対応しています。土壌改良、大気汚染といった問題に対するアプローチも可能です。これらすべての問題に対応することが、弊社の存在意義であると私たちは考えています。「バイオのチカラで未来を創る」「Micro insight Macro foresight」が弊社の経営ビジョンとなっていまして、微生物の力でどこまで未来を作れるか、を表した言葉になっています。アサヒグループは「環境ビジョン2050」を掲げています。「気候変動」「容器包装」「農産物原料」「水資源」の分野においてグループ内でできることを全部やろうとしていますけれども、アサヒバイオサイクルとしては、「気候変動対策分野」「One Health」「サーキュラーエコノミー」の3つに取り組んでいます。(2)気候変動対策分野ア.陸稲生産気候変動の分野において微生物で何ができるのか、と疑問に感じられるかと思いますが、日本の中で排出しているGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)の約半分がメタンです。実は、水田栽培の稲作がメタンを最も多く排出するのです。なぜかと言いますと、土壌の中のメタン菌は酸素のない状態になるととても活発に働いてメタンを出します。水稲は水がバリアになって酸素が遮られるので、メタン菌にとってはこのうえない良い環境なのです。メタン菌が活躍したあと、水稲の茎などを通してメタンが排出されるのです。これに対して、陸稲という、畑で稲を作るやり方があります。このやり方にしますと、メタンはほとんど出ないのです。そこで私たちは、このメタンフリー米をぜひ拡めたいと思っています。現在、弊社が開発したビール酵母細胞壁を加工処理した農業資材が、陸稲の栽培において非常に有効に使われています。この資材は根張りを大幅に改善し、水が少ない陸地で育てる際にも、効率的に水分を吸収させることが可能となります。これにより、一般的には米の栽培が不可能とされていた北海道の網走でも成功を収めることができました。このような成果を受けて、現在では日本全国で積極的に利用されています。イ.水田転作支援また、水田の転作支援も行っています。農家の方々がコメはなかなか儲からなくて大変だということもあって、例えばサツマイモなど、お金になる作物への転作を希望されるケースが増えています。そうしたニーズに応え、弊社の資材を使用して土壌改良を行い、転作を支援しています。この取り組みは、陸稲の栽培や、水田を畑に転作する際の水資源の使用量を最大70%程度も削減することが可能となります。また、メタンガスの排出もほぼゼロに抑えることができるので、GHGの削減に貢献できるものと考えています。ウ.減農薬生産プロセスによるGHG削減さらに、緑化におけるCO₂排出削減にも取り組んでいます。日本には約2,100か所のゴルフ場があるのですが、その約3分の1程度のゴルフ場で弊社のビール酵母細胞壁資材が使用されています。農薬を作るプロセスは大量のCO₂を排出するのですが、農薬を使わず、弊社のビール酵母細胞壁資材を使用することでCO₂排出削減にも寄与しています。
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