5 020002003200620092012201520182021人口カバー率で割り戻した台数(推計値)環境省アンケート合計(図表11)海外のファッション 業界に対する廃棄規制の流れドイツ:1996年10月に施行された循環経済・廃棄物法で、他国に先立ち拡大生産者責任(EPR)を明記。汚染者負担原則で廃棄物・リサイクル政策を目指すこととなった。コラム 経済トレンド 117(出所)環境省「令和3年度ファッションと環境に関する調査業務【海外動向調査】」、環境省「令和3年度廃家電の不法投棄等の状況について」、UNIQLOHP、H&MHP、無印良品HP、ZARAHP、KDDI総合研究所「セール抑制が始まった~セールが日常だったアパレルブランドの挑戦」、株式会社ユナイテッドアローズHP(出所)環境省「令和3年度サステナブルファッションに関する意識調査」、株式会社SHIBUYA109エンタテインメント「Z世代のファッションに関する意識調査」、環境省HP、クロスマーケティング「衣類のサステナブルに関する調査(2021年)」、シタテル株式会社「【調査リリース】「年始の初売り・セールは過去の風物詩に「コロナ禍前と比べてセールの売上減少を実感」が7割超え」ブランド名定価販売の比率を上げる(セールを抑制する)ために以下を実施・商品ラインナップの絞り込み・春物セールの廃止・セール期間の短縮・セール対象品や値下げ率の精査定価販売を強化したことも相まり、同社単体の小売、ネット販売(アウトレット等の売上は含まない)等の売上総利益率は改善傾向。余剰在庫を減らすために、買い付け量とオリジナル品の生産量の最適化に努めている。2020年11月末時点での定価販売率は73%。これを80%に底上げし、2023年までで店舗でのセールを廃止。ユナイテッド・アローズロン・ハーマン概要持ち込み者の特典ブランド名UNIQLO・GU・PLSTファーストリテイリングが運営する3社で販売した全商品を対象に不要な衣服を回収。ブランドや状態を問わず衣服や布地を回収。なし同社の買い物で使用できるクーポン券の提供。同社の買い物で使用できるポイントを付与。H&M無印良品無印良品の衣料品全般・タオル等を回収。あらゆる種類の衣類、家庭用布製品、靴、アクセサリーなどを回収。ZARAなし・日本国内で店舗展開されているブランドにおいて、定価販売比率の向上を掲げる企業が現れている(図表10)。余剰在庫を減らすことや利益率向上を狙ってこうした戦略が取られており、売れ残った在庫品の量を減らすという観点で、持続可能性のための取組みの一つと言える。価格競争で競争力を上げているSPA(※)以外の企業は選択しにくい戦略であるが、ブランドの特性によってはこうした戦略を選択することも有効と考える。(※製造から販売まで一貫して行う業種:UNIQLO、ZARA等)・環境負荷低減のために、世界的に様々な取組みが施行されている。フランスでは2020年に事業者に対して衣服の廃棄を禁止する法律が公布された。それに続く形でEU全体においても昨年12月に同様の法案が大筋合意された(図表11)。・一方、日本では衣類の廃棄やリサイクル等について定められた法律はない。これに対し、規制を設けるべきという考え方もできるだろう。しかし規制により事業者の負担するコストが増加するため、規制を逸脱して廃棄物を処理しようとする事業者が現れる可能性がある。例えば、家電リサイクル法施行直後、数年間は家電の不法投棄が増加傾向にあったと考えられている(図表12)。日本においては個社ごとに図表13のようなリサイクル、リユース等に関する取組みが行われている。企業の自主性に依拠するとともに、環境負荷低減に対する取組みを活性化させることが重要であると考える。・消費者が服を選択する際に重視するポイントを見ると、「ブランド名」や「流行・トレンド」を重視している割合は比較的低位に留まる(図表14)。また図表15の通り、若者を対象とした意識調査では若者はブランドよりも衣服のテイスト(ファッションの系統)を基準に選んでいることが分かる、すなわち自身のなりたい「理想のイメージ」が念頭にあり、それに合致する服が選好されていると言えるのではないか。環境負荷の少ない商品を身に着けることを「理想のイメージ」に昇華することが、サステナブルファッションをより浸透させる、一つの手段と考える。これには企業によるイメージ戦略が重要になってくると言えるだろう。・持続可能な消費行動が重要であるという認識は広がっているが、具体的な取組みを行っている層は11.9%に留まる(図表16)。「サステナブル製品かどうかが分かりやすくなってほしい」、「手近なお店でもサステナブルな製品を置いてほしい」と回答する消費者も多い(図表17)。サステナブルな製品や取組みを行っている企業をより分かりやすく周知することも必要と考える。・価格は衣服を選ぶ上で最も重視するポイントではあるが(図表14)、一方でセール商品に対する消費者の関心が低下したと見るアパレル業界の関係者は5割近くに達する(図表18)。衣服を選ぶ基準として「価格」の優先順位を下げる消費者が増加する可能性がある。持続可能性への消費者の関心が高まる中、今後、一層企業独自の取組みが活性化されることやサステナブルな商品、取組みを実施している企業が消費者に分かりやすく周知されることを期待する。価格デザイン着回しのしやすさブランド・メーカー名15.4耐久性13.3流行・トレンド環境、人、社会に配慮した製法や素材かリサイクルやリメイクがしやすいかどうか0(%)11.41.70.5255075100(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。79.170.049.9取組み活用方法難民キャンプ等へ寄贈。固形燃料へリサイクル、自動車用防音材へリサイクル。着用できる衣服は販売。清掃用品に作り変えてリサイクル。もしくは織物繊維に細断され、断熱材の製造などにリサイクル。手を加えることで販売できる状態の衣服は染め直す等の加工をし販売。それ以外は衣服などの商品の原料として再生。状態により、寄付、再販売される他、布巾等の別繊維製品や自動車向け素材等にリサイクル。0%20%とても当てはまるあまり当てはまらない0%20%どういった課題や取組があるのかをよく知っており、具体的な取組を行っているどういった課題や取組があるのかをよく知っているが、具体的な取組を行うまでは至っていない聞いたことはあるが、具体的には知らない28.311.911.929.929.940%60%やや当てはまる全く当てはまらない80%40%60%80%フランス:2020年2月1日循環経済法が公布。売れ残った新品の製品を企業が焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止。2022年1月からリサイクルや寄付による処理を義務付け。オランダ:2023年1月、上記と同様の制度の導入。スウェーデン・ブルガリア・イギリス・スペイン:今後、法制化することを発表。EU全体においても廃棄禁止の法律が整備される予定4.921.542.945.345.312.7知らなかった2.419.318.413.727.420%15%10%5%0%サステナブルで実用性のある製品が出てほしい100%どちらとも言えない100%0%20%少し高まっている大幅に低下している以前と変わらない分からない・答えなし40%(万台)30家電リサイクル法施行後25201510サステナブル製品かどうかが分かりやすくなってほしい手近なお店でもサステナブルな製品を置いてほしいサステナブル製品がどういうものなのかをもっと広めてほしいサステナブルでおしゃれな製品が出てほしい16.216.215.018.918.910.55.35.3(注)人口カバー率:廃家電4品目の不法投棄の状況把握調査において、不法投棄台数のデータを有していた自治体の合計人口の総人口に占める割合。80%100%60%少し低下しているセールに関係なく欲しい商品を購入する傾向が高まっている当てはまるものがない(図表10)定価販売比率向上に向けた各社の動向まとめ(図表13)リサイクルやリユース等に関する企業の取組み(図表14)衣服購入時に重視する点(n=2,000人)(図表15)ファッションはブランドより「テイスト」を重視するか(n=205人,15〜24歳が対象)(図表16)サステナブルファッションの認知度と具体的な取組み実施割合(n=1,908人)(図表12)家電不法投棄数の推移(図表17)衣類のサステナブルに対しての 要望上位5項目抜粋(n=1,100人)(図表18)コロナ前と比較したときのセールへの関心(n=5,000人,アパレルメーカーの経営者・役員が対象)ファイナンス 2024 Mar. 59現在の取組み事例とそれに対する考察サステナブルファッションをより浸透させるために
元のページ ../index.html#63