ファイナンス 2024年3月号 No.700
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+CO2排出量:約25.5kg水消費量:約2,300ℓ※製造段階は、紡績・染色・裁断・縫製・輸送を指す]円[格価のりた当枚一服衣]円兆[模規場市内国]点億[量給供内国]円万[額荷出りた当員業従(出所)時事通信「ファッションの環境負荷減らせ=廃棄、CO2ゼロに―官民で取り組み」、朝日新聞「サステナブルファッションとは? ~ファッションとSDGsの基礎知識~」、環境省HP、日本化学繊維協会「繊維ハンドブック2023」、経済産業省「生産動態統計調査」、日本総合研究所「環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務」(出所)環境省HP、KDDI総合研究所「セール抑制が始まった~セールが日常だったアパレルブランドの挑戦」、日本化学繊維協会「統計情報(製造品出荷額、従業者数)」、染色綿花栽培製造廃棄・ファッション業界は環境負荷の高い産業と言われており(図表1・2・3)、ファッション分野におけるサステナビリティ(サステナブルファッション)についての関心が高まっている。特に近年、SDGsやESG投資等の影響もあり、「コト消費」や「新たな価値観」が求められるようになった結果、社会のトレンドや消費者の意識が変化していると考えられる。・「サステナブルファッション」とは、原材料の調達から生産、流通、着用、廃棄されるまでのライフサイクルにおいて、将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境、ファッションに関わる人や社会に配慮した取り組みを指す。・繊維製品は海外拠点での生産の割合が高く(図表4)、国際展開によって産業競争力を維持してきた背景がある。今後、グローバルに産業競争力を維持・強化していくためには、環境負荷の低減や人権への配慮等が不可欠である。・環境負荷の根源になっているのは、需要をはるかに上回る商品を製造するという商慣習である。2020年以降はコロナの影響もあり、外出自粛に伴う衣類供給量の低下が見られるものの、1990年代から比較すると、衣類供給量は高止まりする一方、衣服1枚あたりの価格は低下し、市場規模は縮小傾向にある(図表5・6)。価格低下は生産性向上の側面もあると考えられるが(図表7)、大量生産・大量消費が拡大しており、衣服のライフサイクルの短期化による大量廃棄への流れが懸念される。・需要をはるかに上回る製品を生産しようとするために、一枚当たりの生産コストを低く抑えようとする力が働き、低賃金、長時間労働などの劣悪な労働環境の問題が浮上することにもつながっている。・企業はセールを前提にマークアップを付けて定価を設定していると言われている(図表8)。セールをせず、定価で売ることが前提となれば、定価に乗るマークアップを下げることができ、企業、消費者双方にとって有益になるはずだが、セール価格で購買することが広く浸透している中で、この値付けの慣習を変えられない企業が多くあると考えられる(図表9)。4540353025201510501990199520002005201020152020国内供給量(左軸)国内市場規模(右軸)端材等排出量CO2排出量約90,000kt水消費量約83億m345,000t++0服一着あたり換算繊研新聞「AIを活用したアパレル業界の収益構造改革」化学物質による水質汚染大量のCO2排出水を消費(億m3)40,00030,00020,00010,000工業用水生活用水農業用水201816141210864208,0006,0004,0002,0000198519881991199419972000200320062009201220151.2%日本で供給される衣料品の水消費世界の衣料品の水消費その他産業工業用水1990199520002005201020152020202113.3%2000原価粗利セール有日系アパレルZARA0%※輸入浸透率=輸入量÷(生産量+輸入量-輸出量)※衣類=布帛外衣+布帛下着+ニット外衣+ニット下着(図表4)日本における衣類輸入浸透率(%)1009080706050401990(図表8)製品の価格構造イメージセールに伴うロス分のマージン20102020(年)セール無(図表9)定価販売比率比較50%100%(図表2)製造段階での環境負荷総量(年間)(図表5)国内アパレル供給量・市場規模の推移(図表1)ファッション業界と環境負荷(図表3)世界で利用される水消費(図表6)衣服一枚当たりの価格推移(図表7)繊維業界 生産性推移2,0001,8001,6001,4001,2001,000大臣官房総合政策課 調査員 胡桃澤 佳子/西村 海生本稿では、環境負荷の高いファッション業界が持続可能な産業になるために必要な改革について考察する。コラム 経済トレンド117問題の根源・構造概要 58 ファイナンス 2024 Mar.サステナブルファッションの動向について

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