ファイナンス 2024年3月号 No.700
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(写真1)正面のガラス張りのビルが世界銀行財務局。火災報知機の誤作動で避難した際に撮影したものなので、ビルのそばに消防車が止まっている。ファイナンス 2024 Mar. 55 2 2 調査及びレポート作成筆者の部署では、金融市場で話題となっているようなトピックについて、公的資産管理の視点から調査・分析を行い、その結果をレポートにして公表している。ESGに関するものであったり、最近の金利の高騰に対する対応に焦点を当てたものであったり、トピックは様々だが、自分もいくつかのプロジェクトに参加してわかったことは、洗練された英文の作成には、英語力が十分になければとにかく時間がかかるということ。調査・分析については、限られた時間でよりよい分析結果を得るには、どういった情報を重点的に収集すべきか、どういった視点で分析すべきかといった、マーケットに関する知識やセンスが問われる。ただ、知識やセンスが劣るとしても、多少時間をかけてより多くのデータを集めることで、より幅広い分析が可能となり、一定の分析結果を得ることができるだろう。ただ、分析結果が興味深いものであったとしても、淡々と記載するだけだと読み手がつまらなく感じて最後まで読んでもらえない一方で、分析結果に新しい点はそれほどない場合であっても、よいストーリー・洗練された文章によって、思わず最後まで読んでしまうということも自分でも経験した。できるだけそうした文章に近づけるべく、単語の意味を丁寧に調べて正確に意味や使い方を把握しながら、また類語辞典でよりしっくりくる単語を調べたりしてようやくできた文章を、さらに読み直して何度も書き直すという、膨大な作業が必要となる。そうした時間をかけて作成した文章のかなりの部分がプロジェクトのリーダーにばっさり削除、あるいは書き直されたときは、さすがに切なかった。。。でもその修正後の文章はすごく洗練されていて、まさに自分が理想とするレベルだったので、文句のつけようがないのだが。 3 3 職場環境世界銀行財務局は、世界銀行のいわゆる本部ビルとは独立した、別のビルにある。地下鉄で言えば一駅隣で、本部ビルから徒歩15~20分くらい。全面ガラス張りのビルで、ごく一部の幹部のみ個室だが、それ以外のスタッフは全員共有スペースで勤務している。また、幹部の個室、会議室、スタッフが秘匿性の高いやり取りをする時等に使う個室スペースも含め、すべてガラス張りであり、極めて透明性が高い職場である(ゆえに、こっそり昼寝したり、さぼったりはできない!)。本部ビルのスタッフは個室を与えられているらしく、財務局の職場環境に大して否定的な意見もある。確かに、自分の役割を確立し、その分野の仕事は常に自分に依頼が来るくらいまで信用を得ているスタッフであれば、プライベートが確立した個室の方が仕事に集中もできるし時にはリラックスもできてよいのだろうが、勤務経験が浅く、まだ自分の得意分野が十分にまわりに認知されていないスタッフの場合は、放っておいても仕事はあまり来ないので、部内の会議や同僚との会話を通じて必要な仕事を見つけたり、あるいは自分の能力をアピールして同僚から仕事をもらうといったことが必要になる。共有スペースであればちょっとした相談や雑談も気軽にできるため、仕事が見つけやすいのではないかと思う。シャイな筆者(あるいは日本人全般?)にとって、雑談するためだけに仕事中の同僚の個室にノックして入っていくのはハードルが高すぎる。。。話好きの国から来た人は当たり前のようにやるんだろうけど。なお、職場の食堂はビュッフェスタイルで、ハンバーガーやピザなど一部のメニューはビュッフェとは別にオーダーすることもできる。ビュッフェのメニューは、毎日変わるため、あきずに楽しめる。価格も良心的でおいしいので、昼はほとんどここで食べている。

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