単位:兆ドルFOREIGNFOREIGNWATCHERWATCHER先進国新興国及び途上国 出典:IMF International Financial Statistics(IFS)ファイナンス 2024 Mar. 53世界銀行財務局 フィナンシャルオフィサー 伊藤 諭2021年8月より、世界銀行財務局にて勤務している。筆者の所属する部署では、RAMP(Reserve Advisory & Management Partnership)というプログラムの下で、中央銀行、年金基金、ソブリンウェルスファンドといった公的資産を取り扱う機関に対して、預かり資産の運用や、資産運用方法に関するアドバイスといったサービスを提供している。一般の投資家が、証券会社に手数料を支払って資産を預けて運用を任せたり、運用に関するアドバイスを求めたりするが、その公的版と言えばイメージしやすいだろうか。世界銀行でも証券会社と同様に手数料を徴収しているが、世界銀行は国際機関であり営利を目的としていないため、手数料収益をワークショップやミッションなどを実施するための費用に充てることで、顧客に還元している。ワークショップとは、運用に関する主要なトピックを取り上げ、1週間程度かけ授業形式で参加者に運用手法を学んでもらうものであり、単に運用手法について話を聞くだけではなく、市場データのサンプルを使用し、市場の状況に応じて具体的にどういった資産運用を行うかを講師に相談しつつ参加者自身に検討してもらうといった、実践的に学ぶ場を設けている。また、ミッションとは、世界銀行の運用の専門家が実際に顧客のもとに赴き、顧客のニーズに合わせて運用技術を教えている。ワークショップでは、まさに学校の授業のように参加者全員が一つのトピックを学ぶが、ミッションでは、家庭教師のように、その顧客の資産内容や運用方針を踏まえてどういった運用手法を取りうるかといった、テイラーメイドの技術支援を行っている。筆者は、顧客の中でも中央銀行における各国の外貨準備の資産運用に関する業務を担当しているため、今回の記事では外貨準備にフォーカスを当てつつ筆者の実体験を中心に具体的な業務内容などについてお伝えしていきたい。まず、外貨準備がどういうものかについて触れておきたい。外貨準備とは、為替が過度に変動している際に為替介入によってその変動に歯止めを掛け通貨の価値を安定させたり、通貨価値の急落等により、外貨建ての対外債務支払いが困難となった際に使用する、外貨建て資産である。以下のグラフは、2023年第二四半期までの外貨準備高の推移を、先進国と新興国・途上国の別に見たものである。新興国・途上国の外貨準備は、2014年にピークに達した後、2014年から2015年にかけて減少しているが、これは新興国・途上国の外貨準備合計額の約40%(3.4兆ドル)を占める、中国の外貨準備が大きく減少したことが一つの大きな要因である。また、足元では、欧米の金利上昇に伴い保有資産の時価が下落(参考)したこと等により、特に2022年に先進国及び新興国・途上国ともに外貨準備高が大きく減少した。海外ウォッチャー各国の外貨準備の資産運用における世界銀行の役割
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