ファイナンス 2024年3月号 No.700
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11/202308/202305/202302/202311/202208/202205/202202/202211/202108/202105/202102/202111/202008/202005/202002/202010/2023図表10は物価連動国債の発行額に加え、日銀の購入額及び財務省の買入消却額を比較したものですが、発行減および買入消却の増加により、市中発行額という観点でみた物価連動国債の供給量はマイナスになりました。2008年の金融危機以降は財務省による買入消却の金額が大きいことが確認できますが、2016年から日銀の購入額がそれを上回ります。コロナ禍では財務省による買入消却も増えていたことから、日銀及び財務省による買入総額は、物価連動国債の供給量を上回りました。7/20234/20231/202310/20227/20224/20221/202210/20217/20214/20211/202110/20207/20204/20201/2020図表8 物価連動国債発行額の推移(億円)4,5004,0003,5003,0002,5002,0001,5001,0005000図表9 財務省による買入消却の推移(億円)3500300025002000150010005000*18) 国債市場特別参加者会合(第87回・第89回)の議事要旨によれば、理財局は、「皆様から事前に御意見を伺ったところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うリスクオフ地合いに加え、流動性の低下や原油価格の下落に伴って、グローバルに物価連動債が売られ、需給が大幅に悪化していることから、5月の物価連動債の発行入札が3,000億円の規模となると、供給が需要を相当程度上回る恐れがあるとの御意見が聞かれた」、「4-6月期の発行額については、3月の本会合後に決定した1回の入札当たり3,000億円から、更に1,000億円減額し、2,000億円としてはどうかと考えている」としています。*19) ここではPD会合などの表現を参照しています。係の悪化がある場合、日銀のオペも流動性を改善させる効果が見込めますが、日銀は2016年6月からオペをそれまで2か月に1回(奇数月)実施していたところ、月2回の実施へ変更しました。再び図表7をみると、2016年6月から月2回のオペを実施していたところ、コロナ禍に金額を増加させたのち、2021年4月からは月1回に変更しています。これは2021年3月に実施された「金融緩和の点検」後です。「点検」では国債市場における市場機能の回復の必要性が指摘されたことから、その一環として、物価連動国債についても、オペレーションの実施回数を月1回に変更したと解されます(1回あたりの金額を2倍にしています)。4.3 コロナ禍の経験:発行減および買入消却2020年から始まったコロナ禍の影響により、物価連動国債の流動性が低下し、2008年の金融危機時と似た状況がうまれました。財務省はこれに対応するため、(1)国債の供給量そのものを減らすとともに、(2)買入消却を増やすことで、物価連動国債の市中残高を減らすことで流動性を改善させる対策を講じました。(1)については、令和2年度(2020年度)の国債発行計画で予定されていた発行額を2020年3月に、4,000億円(年間1.6兆円)から3,000億円に減額すると発表しました。その後、国債市場特別参加者会合(PD会合)などを経て、5月における1回あたりの発行額をさらに2,000億円まで減額しました(図表8)*18。財務省は供給量を減らすべく、当分の間、第Ⅱ非価格競争入札を取り止めるなどの対応も行いました*19(第Ⅱ非価格競争入札については服部(2023)を参照してください)。一方、(2)の買入消却の増加については、2020年3月に3,000億円の追加の買入を実施しました(図表9)。この金額は、その後における(物価連動国債の)入札一回分の発行額を上回る規模に及びます。これは、コロナ禍という特殊な環境下で、流動性が枯渇した物価連動国債を有する市場参加者に配慮した施策といえます。この買入消却は、その金額が大きいだけでなく、入札方式として、一定価格以上では購入しないというルールを設けており、流動性危機時における対応として大変興味深い事例といえます(その詳細はBOX 2を参照してください)。2020年4月以降の買入消却額についても、それまでの毎月200億円から500億円に増額させました。コロナ禍以降の試み財務省は、「現在の発行額及び買入消却額については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とし 46 ファイナンス 2024 Mar.

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