ファイナンス 2024年3月号 No.700
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※ なお、本稿の意見にわたる部分は、筆者個人の見解であり、所属する組織の意見ではない。また、誤り等に関する責任は、すべて筆者に帰するものである。 中央銀行デジタル通貨(CBDC)の制度設計の大枠の整理に向けて[写真1] 第1回CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議 [写真2]理財局国庫課CBDCチーム一同(令和6年1月26日)ファイナンス 2024 Mar. 39透明性あるものに改善することが国際的課題である。こうした課題に対応するため、ホールセール型を中心としてCBDCの活用も選択肢となり得るが、まずはCBDC間の相互運用性の確保の観点から、技術面における標準化を通じた国際連携を進めておくことが重要である。政府としては、本有識者会議の取りまとめを踏まえ、諸外国の動向も見つつ、日本銀行とともに、制度設計の大枠の整理に向けた取組を進めていく。このため、2024年1月に「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」を設置し、まずは、関係府省庁の所管行政において生じる課題の洗い出しを行いつつ、今年の春を目途として一定の整理を行うことを目指している。貨幣は、国家に対する信頼・信用に基づいて利用されている。本稿の冒頭でも述べたとおり、貨幣は、それ自体に貨幣が表象している価値はないにもかかわらず、その表象した価値を持つものとして流通・機能する。こうした「共同主観的現実」の根源にあるものは、利用者の信頼・信用であることを決して忘れてはならない。また、貨幣に限った話ではないが、利用者のニーズに合うものでなくなってしまえば流通・機能しなくなる、といった事態にもなりかねないことも、常に肝に銘じておく必要があるだろう。CBDCの制度設計を考えていくにあたっては、貨幣の「媒体」のあり方を考えるといったことにとどまらず、貨幣の本質や根源を突き詰めて考えることは避けて通れない。極めてチャレンジングな仕事ではあるが、今後とも、CBDCチーム一同、誠心誠意、取り組んでいきたいと考えている。3. おわりに 〜制度設計の大枠の整理に向けて〜

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