ファイナンス 2024年3月号 No.700
38/104

●  FTAメンバーとその他の関係者間でのキャパシティビルディング活動を切り開く税務当局のための知識共有プラットフォーム(KSPTA)といった、キャパシティビルディングを支援するツールの継続的な開発。●  プログラムの設計やプログラムのコラボレーション、モニタリング及び評価、ないしその国特有の課題や機会に関する相互の議論から利益を得られる、二国間の長期のキャパシティプログラムに焦点を当てたFTAのキャパシティビルディングネットワークの新しいサブグループ。我々は、FTAのキャパシティビルディングネットワークが主導するFTAの税のキャパシティビルディング作業を、地域の税務組織や国際機関、途上国の税務当局との緊密なパートナーシップの構築を通じて、引き続き強化することに合意した。我々はこの本会合において、アフリカ税務行政フォーラム(ATAF)、米州税務長官会議(CIAT)、国際通貨基金(IMF)、太平洋島嶼国税務行政協会(PITAA)からの代表者及びブルネイ・ダルサラーム、ブルガリア、カンボジア、ラオス、フィリピン、ベトナムの長官やシニア級職員を歓迎できたことを喜ばしく思う。我々はこの本会合において、税務行政が直面する主な生じつつあるリスク、信頼の維持・構築に関する課題、徴収共助を含む徴収業務、租税詐欺・租税犯罪との闘い、及び税の透明性に関する認識を高めるためにシドニー本会合以降取り組んできた作業の進展についても議論した。我々はまた、無意識の偏見への対応やジェンダーバランスの改善といった、組織の課題についても議論した。これらの議論の成果は、関連するFTAの作業プログラムや有志グループ(Communities of Interest)に還元され、今後の作業の参考となるだろう。我々はまた新しい多国間のハッカソンという取組の試行結果についても聞いた。多国間のハッカソンは18の異なるFTAメンバー国から成るチームが、数か月にわたってオンラインで共に作業を行い、ケニア及びインドネシアがシャドーエコノミーに関連して特定した現実の課題について革新的な解決策を生み出した。最後に、この本会合を主催し親切にもてなしてくれたシンガポールに、また、2024年の本会合の開催を申し出てくれたギリシャに心から感謝する。「税務行政2023」を含む、オーストラリアでの2022年本会合以降に公表されたFTAの報告書に関する情報は、本会合参加者のリスト及び議題と同様、本成果に関する声明の付属文書に掲載されている。5.おわりにFTAは喧々諤々の議論をするような場ではなく、各国それぞれが抱える課題を共有し、よりよい税務行政の実現に向けて協調できる道を探る場である。それゆえ、具体的成果が見えづらい面があるが、FTAを通じて学ぶことは多い。例えば、税務行政のDXについて、進展度合いも事情も国によって異なるが、抱える課題は、セキュリティ確保、リソース不足、他行政機関とのシステム統合など似通っている。今回のFTAにおいては、シンガポールGovTechより、同国のスマート国家イニシアチブについて紹介されたが、その際にも上記課題についての質問が各国より相次ぎ、GovTechより回答を得た。このように、FTAは先進的取組を行う国から課題解決のヒントを得られ、また同時に各国の課題についてもやり取りの中で窺い知ることが出来るという点で有意義な機会である。また、FTAメンバーに対し国際協調へのコミットメントを促したことも重要な成果の1つである。今回のFTA会合では、徴収共助について住澤長官・中村審議官がプレゼンテーションを行い、徴収共助のネットワークへの参画を各国に呼び掛けた。現状、徴収共助制度の導入に慎重な国が一定数あり、その事情はFTAのメンバー国においても見られる。しかしながら、当該制度をより効果的に機能させ、各国の利益に繋げていくためには、今後より多くの国が当該ネットワークへ参画することが肝要である。今般の呼び掛けを通じ、FTAメンバー国等に当該制度の有効性や必要性に対する認識がさらに広まり、ネットワーク拡大への機運向上の一助となったのであれば幸いである。個人的にも、ハッカソンというFTAの新たな取組において、インフルエンサーへの課税について各国の長官の前でプレゼンテーションを行ったのは非常に貴重な経験であった。その後の議場で意見を求められたり、声を掛けてもらったりする場面もあり、オーディ 34 ファイナンス 2024 Mar.

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る