ファイナンス 2024年3月号 No.700
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〈税務行政のデジタルトランスフォーメーション〉〈税に関するキャパシティビルディング〉第16回OECD税務長官会議●  グローバル・ミニマム課税の運用におけるコンプライアンスやコラボレーション、安定性をサポートするための税務当局間の協調の深め方の検討を含む一貫した第2の柱の効果的な実施を確保するために協働すること。●  他の国際機関や地域組織との緊密なパートナーシップを通じたグローバルなキャパシティビルディングの取組の有効性と到達度を向上させること。我々は、納税者が通信や取引、事業活動に使用しているシステムに税務プロセスがますます組み込まれるような、よりシームレスな税務行政モデルへと時間をかけてシフトすることを可能にする、デジタルトランスフォーメーションがもたらす大きな機会を認識している。デジタルトランスフォーメーションのためのFTAの「税務行政3.0」のビジョンに示されているように、納税者の時間とリソースを節約することによる大きな経済的利益に加え、FTA全体で見た場合、1%の歳入の増加は年間1,300億ユーロ超の金額を生じさせるだろう。これは旅であり、完全な利益を実現するために多くのピースを組み合わせなければならないだろう。これには、複数のデジタルトランスフォーメーションのビルディングブロックを、政府の他の組織や民間と、また国際的に共に開発することが含まれる。そこで我々は、「税務行政3.0」のビジョンの主要なビルディングブロックを進展させることを促すため、ビジネス界や学界のステークホルダーとともに、一連の先駆的なプロジェクトに取り組むことに合意した。●  デジタル・アイデンティティの相互運用性に基づく、税務当局間及び第三者との双方で、シームレスに国境を越えた電子的な税務プロセスを可能にすること。●  デジタル・アイデンティティやデジタル戦略、人工知能の分野で、デジタルトランスフォーメーションを周知するのに役立つ重要な共通課題について、ソートリーダーシップを育てること。さらに我々はデジタルトランスフォーメーションがもたらす行政の抜本的な変化と、税務当局の職員全体における新たなスキルの必要性についても議論を行った。我々は、これらの課題に共に取り組んでくれるFTAのネットワークや有志グループ(Communities of Interest)を通じた進行中の活動を支持した。〈2つの柱の解決策の実施と税の安定性〉我々は、グローバル・ミニマム課税の実施により生じる課題と機会について議論した。この一連の共通ルールに基づき、我々は既にGloBE情報の収集及び交換のための効果的なメカニズムを提供する標準化された申告書について合意している。さらに我々は、リスク評価の分野を含む協調的なコンプライアンスを通じてなど、グローバル・ミニマム課税の執行を合理化する方法を検討することに合意した。また、多国間の相互協議手続(MAP)及び事前確認(APA)の取扱いに関するマニュアルの本年の公表を受け、我々は税の安定性を向上させるための共同作業の次のステップに期待する。次回のFTA税の安定性デー(Tax Certainty Day)は、来年度の優先事項を検討する機会として、11月14日にオンラインでの開催が予定されている。我々は、全ての税務当局がFTAの作業の成果から確実に利益を得られるようにする重要性を認識している。最近では、以下のようなキャパシティビルディングプログラムを通じて実現してきた。●  第2の柱の実施に向けて共に進む際に、知識の交換及び直接的な支援のための相互フォーラムを提供する新しい知識共有ネットワークの立ち上げ。この知識共有ネットワークには、開発援助を受ける資格のある41の法域を含む98の法域から既に400名近い税務職員が参加している。●  税務行政のデジタル化に関する国境なき税務調査官(TIWB)プログラムの新しいパイロットの実施。これによりデジタル化イニシアチブにおける多くの戦略的・実務的側面について、守秘を保ったハイレベルな関与が可能となる。●  現在世界58か国の税務当局が完了した「デジタルトランスフォーメーション成熟度モデル」と、80の税務当局のデータを掲載した「税のテクノロジーイニシアティブ目録(ITTI)」の推進。ファイナンス 2024 Mar. 33

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