【写真2:プレゼンを行う住澤長官・中村審議官】この本会合のテーマは、我々がグローバルな税務当局の未来を形作り、新しいグローバルな合意を実施し、グローバルなキャパシティビルディングの取組を支援するために協働する際の、税務当局間のみならず、ますます広範なステークホルダーとのコラボレーションとパートナーシップである。我々は以下について合意した。● コンプライアンスをさらに組み込み、タックスギャップを是正し、コンプライアンス負担を大幅に軽減するための新しいテクノロジーツールを活用する「税務行政3.0」のビジョンの実現を促すための野心的な一連のプロジェクトにコラボレーションすること。(5) 租税回避、租税犯罪、その他の犯罪への取組み強化(6) 新たな取組み−ハッカソン(新しい税務行政の課題についてのプレゼン大会)しつつ、当該制度の重要性を更に強調するといった反応もあった。租税回避・租税犯罪の傾向やそれらに対応するための国際協力についての議論も行われた。議場では、新しいデジタルサービスのビジネスモデルを悪用した不正還付や支払いのデジタル情報を悪用した租税回避が発生している旨の発言がなされた。出席者からは、コロナ禍においてコロナの支援制度を悪用した租税犯罪も行われたとの報告や、リアルタイムで各租税犯罪に対応することが理想であるとの発言があった。また別の国からは、新しい犯罪モデルについては、発覚次第、国家間で情報を共有し被害を最小に抑える必要があるとの意見が出された。4.最終声明会議の締めくくりにあたり、上記議論を総括した最終声明(コミュニケ)が採択された(コラム3参照)。また、次回会合は本年11月にギリシャで開催される予定。今回のFTA本会合では新たな取組みとして、ケニア及びインドネシアにおけるシャドーエコノミーに関連した課題への解決策についてのプレゼンテーションを行う「ハッカソン」が開催された。これは、FTAメンバーの18か国で6チームに分かれて半年弱オンラインで議論を続け、その成果を本会合にて発表するものである。日本からは筆者が、インドネシアの検討課題「ソーシャルメディアプラットフォームを利用した経済活動を行う納税者の課税所得の把握」について、オーストラリア・シンガポールとチームを組み、ハッカソンに参加した。このインドネシアの課題は、要するにインフルエンサーへの課税を今後税務当局はどのように行っていくべきかといった問である。この課題は一律に解決できるものではないという観点から、我々のチームは、解決策に至るまでの戦略としての「概念的枠組み(Conceptual Framework)」を提案した。他のチームからは、内部告発プログラム、リスクプロファイリング人工知能モデルや若手起業家救済プログラムといった解決策が提示された。このハッカソンの取組みは、新たな問題解決方法として各国長官より非常に高い評価が得られたため、今後のFTA本会合においても継続される可能性がある。 32 ファイナンス 2024 Mar.(コラム3)2023年FTA本会合コミュニケ(仮訳)我々、43か国の税務当局の長官及び代表は、10月11日から13日に、シンガポールで開催された第16回OECD税務長官会議(FTA)本会合に参加した。世界中から先進国及び途上国両方の税務当局が集まった53か国のFTAメンバーは、公務の財源を賄うため年間13兆ユーロを超える金額を調達する責務を負っている。
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