➢ 2021年12月、「DX成熟度モデル」公表➢ 2022年9月、第15回FTA本会合(シドニー)上記アクションプランにおけるAction 1として、税務行政における現在のDX成熟度を確認するため、また他の税務当局との比較によって自国の位置を理解するために、各国が自己評価を行う「DX成熟度モデル」が作成され、2021年12月に匿名形式で結果が公表された。優先すべき分野に効果的にリソースを投入するための戦略的枠組を作成するためのワーキンググループの設立が提案され、承認された。(1) 第1の柱/利益A第1の柱のうち利益Aは、新たな多数国間条約の締結により、グローバル企業グループが物理的拠点(恒久的施設、Permanent Establishment:PE)なしに活動する市場国に対しても、新たに課税権を配分する制度である。恒久的施設によって課税権を基礎付け、独立企業原則によって利益の帰属を決定してきた従来の考え方を一部見直し、市場国での収入閾値に基づく課税根拠(ネクサス)と収入の源泉(レベニューソース)ルールにより、グローバル企業グループの一定の利益を市場国へ配分する内容となっている。当初は全世界収入が200億ユーロ超かつ利益率が10%超のグローバル企業グループを対象とし、条約発効の7年後にレビューを行い、円滑な制度実施を条件に、収入閾値を100億ユーロに引き下げることを予定している。令和6年6月末までに多数国間条約の署名式の実施、令和7年中の多数国間条約の発効を目標として引き続き議論が行われている。なお、このルールが実施される際には、一部の国において実施されているデジタルサービス税のようなその国独自の課税措置(一方的措置)は撤廃されることとなっている。(2) 第1の柱/利益B第1の柱のうち利益Bは、キャパシティの低い国のニーズに焦点を当てつつ、「基礎的マーケティング・販売活動」として、一定の基準を満たした取引に対して独立企業原則の適用の簡素化・合理化を目的とした措置である。その成果物が、令和6年2月にIFにおいて合意され、その合意内容が、OECD移転価格ガイドラインへの追加事項として公表された。これにより、利益Bの適用を選択した国は、令和7年1月以降に開始する事業年度における自国内の適用対象取引に対して、利益Bを適用できることとなった。(3) 第2の柱第2の柱は、税制面における企業間の公平な競争条件を確保すること、及び各国・地域による法人税の引下げ競争に歯止めをかけることを目的として、軽課税国において国際的に合意された最低税率(15%)での課税を確保する制度で、軽課税国に所在する子会社等の税負担が最低税率に至るまで、親会社所在地国で課税する制度(所得合算ルール)を基本のルールとしている。グローバル・ミニマム課税(Global Anti-Base Erosion Rule:GloBEルール)と呼ばれており、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業を対象としている。OECDより、令和5年2月にグローバル・ミニマム課税の一部の取扱いを明記した執行ガイダンス第1弾が、同年7月に執行ガイダンス第2弾及びGloBE情報申告書(情報交換のための申告書様式及び記載情報を他国へ提供する際のルール等を定めたもの)が、同年12月に執行ガイダンス第3弾がそれぞれ公表された。日本においては、令和5年度税制改正において、基本のルールである所得合算ルールが法制化され(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設)、令和6年4月から施行される。 30 ファイナンス 2024 Mar.(コラム2) 経済のデジタル化に伴う国際課税上の 課題に対応するための2つの柱の解決策
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