ファイナンス 2024年3月号 No.700
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➢ 2019年3月の第12回FTA本会合(於:チリ)➢ 2020年12月の第13回FTA本会合(オンライン)➢ 2021年8月、アクションプラン公表 第16回OECD税務長官会議DXの方向性及び技術的・組織的な礎を定めるための枠組みである「Tax administration 2030」の公表に向け協調することに合意。報告書では、各国・地域によってデジタル化のステージが異なることを踏まえ、システム化された税務行政がどのような姿となりうるか、その中核となる要素を抽出し描写するとした。ディスカッションペーパーとして「税務行政3.0(英題:『Tax Administration 3.0』)」が公表され、今後の税務行政におけるDXに関するFTAでの作業の優先分野を特定すること及びロードマップ(アクションプラン)を2021年初めに作成することが承認された。ペーパーでは、現在の税務行政(Tax Administration 2.0)に対して、Tax Administration 3.0では、納税者が日頃利用する業務システムとの連携により、負担感なく正確な納税が可能となるといった世界が描かれている。デジタル・アイデンティティ、電子インボイスの発行、各国間でのDXに係る知見の共有など、FTAでの今後の検討事項(Action)を七つ*3に整理し、アクションごとに随時検討状況を共有することとされた。ファイナンス 2024 Mar. 29*3) Action 1:税務行政におけるDX成熟度モデル、Action 2:税務に関する先端技術の共有、Action 3:デジタルアイデンティフィケーション、Action 4:国際的な電子インボイスの普及、Action 5:シェア・ギグエコノミーへの対応、Action 6:途上国のデジタル化支援、Action 7:知見の共有(2)2つの柱の解決策の実施と税の安定性(3)税に関するキャパシティビルディングタルトランスフォーメーション(DX)に向けたプロジェクトである「税務行政3.0(Tax Administration 3.0)」(コラム1参照)が重要課題として位置づけられている。これまでも税務当局は業務効率の改善と納税者サービス水準の向上の両立という課題に直面しており、FTAにおいても、税務当局による納税者へのサービス提供のあり方や税務行政の効率化に向けた各国の取組について情報共有が行われてきた。DXによって税務当局・納税者双方のコストが削減されることにより、納税者サービスの水準を高めるとともに、納税者の自発的なコンプライアンスの向上にもつながることが期待されている。世界経済のグローバル化・デジタル化が進み、国境を越えた経済活動が複雑・多様化しているところ、経済実態やビジネス形態の変化を反映した国際課税制度への見直しが求められている。特に、経済のデジタル化に伴う国際課税上の課題への対応については、近年G20をはじめとする各種国際会議で大きく取り上げられている。2021年10月にOECD/G20 BEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework:IF)において国際的合意(コラム2参照)が成立して以降、その具体化に向けた作業が進められている。条約と国内法制の整備が終わればいよいよ執行面の議論に移行すること、複雑な制度であり納税者の予見可能性の確保が重要であることから、FTAにおいても重要課題として取り上げてきた。各国当局の協力が前提となっている制度であるため、一層の協調が求められている。途上国にとっては、まずは歳入確保がDRM(国内資金動員)のために重要であり、また2つの柱といった複雑な制度導入にあたり、当局のキャパシティの向上と実務を担当する職員の能力向上が求められている。先進国にとっても、MNE(多国籍企業)を含む企業の活動を円滑に進められるよう環境整備を行うという観点で重要である。加えて、2つの柱で求められる執行レベルの標準化を全世界レベルで達成していく必要があるところ、途上国の能力向上は先進国にも裨益する。FTAにおいても、国際機関とも協力しつつ、途上国の当局との緊密なパートナーシップを通じて積極的に活動している。*3(コラム1) FTAにおける税務行政のデジタルトランス フォーメーション(DX)に関する議論の経緯

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