令和6年度 地方財政対策について*8) 令和5年度補正予算において、令和4年度決算と令和5年度の国税収入の補正に伴う地方交付税法定率分の増+8,584億円及び交付税特会借入金償還繰延+3,000億円について、地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金1,000億円の活用時期を見直すとともに、令和5年度の普通交付税の調整額分の追加交付に加え、地方公共団体が「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の事業を円滑に実施するために必要な財源等を確保するため、令和5年度の地方交付税を5,741億円増額した。その上で、4,843億円について、令和6年度の地方交付税の財源として活用するために繰り越すものとしていた。*9) 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)*10) この震災復興特別交付税の財源は、東日本大震災復興特別会計から交付税特会に繰り入れられることとされている(返還金41億円を除く)。ファイナンス 2024 Mar. 194. 令和6年度地方財政対策(東日本大震災分)について兆9,750億円(対前年度+831億円)と令和5年度からの繰越金4,843億円*8等を加算する。また、交付税特会借入金については、5,000億円を償還し、この結果、交付税特会借入金の令和6年度末残高の見込みは、28兆1,123億円となる。交付税特会において、入口ベースの地方交付税交付金にこうした加減算を行った18兆6,671億円(対前年度+3,060億円)が、出口ベースの地方交付税交付金となる。そして、地方交付税交付金(出口ベース)に地方税、地方譲与税、地方特例交付金等及び臨時財政対策債を加えた地方の一般財源総額(水準超経費を除く)については62兆7,180億円(対前年度+5,545億円)とし、前年度と実質的に同水準を確保している。また、一般財源総額(水準超経費を含む)に国庫支出金や地方債(臨時財政対策債を除く)等の特定財源を加えた歳入総額は93兆6,388億円(対前年度+1兆6,038億円)となり、歳出総額と同額となる。東日本大震災の復旧・復興にあたっては、令和3年度からの第2期復興・創生期間においても、復旧・復興事業及び全国防災事業について、それぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとされている。その財源については、改正された復興財源確保法*9において、必要な措置が講じられている。令和6年度地方財政対策においては、復旧・復興事業費として、(1)補助事業の地方負担分(公営企業債等により賄うこととされている地方負担額を除く)として534億円、(2)地方単独事業分(単独災害復旧事業及び中長期職員派遣等)として122億円、(3)地方税の特例減税措置等に伴う減収分への対応として248億円、合計904億円を計上した上で、その財源として、過去の繰入分のうち交付税特会からの支出見込みがなくなった293億円(年度調整分)を除く611億円を震災復興特別交付税として措置*10している。このほか、国庫支出金等を含めた復旧・復興事業の総額は2,631億円となっており、東日本大震災からの復旧・復興への対応に万全を期すこととしている。なお、全国防災事業については、平成27年度までの実施に伴って発行した地方債の元利償還金(公債費)250億円を計上している。今後の地方財政を考えると、賃上げの実現に伴う給与関係経費の増加や社会保障分野の歳出増などが見込まれる中でも、地方財政計画に計上された事業の実績や効果について「見える化」を進めながら不断に検証し歳出改革を進め、持続可能性を確保していくことが求められる。令和7年度以降も、地方一般財源総額実質同水準ルールの下で、国・地方を通じた財政健全化を目指して取り組んでいくことが必要である。5.おわりに以上のとおり、令和6年度地方財政対策は、地方公共団体の多様なニーズに対応するための一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行を過去最低額である0.5兆円に半減させるとともに、交付税特会借入金を償還計画どおり0.5兆円償還するなど、地方財政の健全化を進める内容としている。
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