ファイナンス 2024年2月号 No.699
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写真 3 東京国税局本郷税務署 署長 島貫 まどか支出を削りましょうという努力はあって、前面に押し出してはいます。長谷川ミラさん 全然足りてないですよ(笑)!もっと押し出した方がいいです。亀遊係長 また、足元の税制改正では、家計支援のための所得減税や、企業の賃上げを促進するための税制など、経済により良い循環を生み出すための税負担の軽減にも取り組んでいます。確かに、将来にわたって安定した税収を確保することは重要ですが、ただどんどん増やせば良いというマインドで働いている職員はいないと思います。島貫署長 国の財政は歳出と歳入の両面のバランスで決まりますから、もちろん、例えば支出をカットすることで対応できるのであれば、増税はしたくないというのが私達にとっても共通認識だと思います。長谷川ミラさん じゃあ実際にこの負担が今後下がるという可能性は今の日本であり得るんでしょうか?もしそういう未来があるんだったら可能性として示してもらった方がいいんじゃないかと思います。島貫署長 消費税と社会保険料に関しては、歳出側の社会保障との関係性があります。高齢化も進んでいくことが見込まれる中、現行の制度の延長線上では、簡単な話ではないのではないかなと思います。長谷川ミラさん 最近、周りの人から「税金って何に使われているかわからないよね」と聞かれることがある中で、逆に「何に使われているかがわかって、ちゃんと自分に還元されていれば文句ないんだな」と思うことがあります。こうしたエピソードも含め、日本の教育では、あまり税金の話をしないじゃないですか。その点についてはどういう風に考えているのでしょうか。島貫署長 教育は近年まさに力を入れているところで、学校に訪問して、税金の大切さや使い道の話をしています。ただ、すべての学校でできているわけではなくて、そういう機会がない子供たちの方が多いので、これからもっと増やしていかないといけないと思っています。亀遊係長 例えば、私が高校生の時に授業で税について学んでいたのは、「社会を支えるために必要不可欠で、税を納めなければ、私たちが安心して暮らせる基盤が機能しなくなる」というもので、税の役割、意義に着目するものが中心だったように思います。個人的な意見ですが、これからは、「例えば自分がサラリーマンになったら、実際にどのような税金を、どれくらい支払うことになるのか。どういった個々の事情への配慮があるのか。」など、より現実に即した形で、自分事として捉えられるように伝えていくことで、正しい理解が得られ、積極的に関心を持っていただけるのではないかと考えています。長谷川ミラさん 因数分解より教えてほしかった(笑)。税金について学ぶ機会も、もう少し増えてほしいなとは思いますね。亀遊係長 長谷川さんは、日本人は「税金がどういう風に使われているのか興味がない」と感じていると仰っていましたが、海外の方は税金の使い道をクリアに理解しているのでしょうか。また理解して育つ文化があるのですか。長谷川ミラさん そうですね。少なくとも欧州では、教育の中で税の仕組みや意義が教えられていると思います。また、彼らは声をあげて国を変えてきた歴史があるからアクションを起こせるし、社会問題を活発に語るという感覚がすごくあるのだと思います。その感覚が違うのかもしれないですね。長谷川ミラさん 先ほど少し聞きましたが、そもそもなぜこんなに税金が足りないという状況になっているのでしょうか。普通の会社だったら予算がなかったら、まずは支出を削減していくけど、なぜそれができなぜ国民負担は上がっているのか 4 ファイナンス 2024 Feb.

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