0510152025303590807060504030201002019*1) 一週間物レポ金利。*2) 消費者物価上昇率の前年同月比+5.0%±2.0%pt。政策金利インフレ率(前年同月比)コアインフレ率(前年同月比)2020202120222023201920202021リラ安20222023本年は我が国とトルコの国交樹立100周年の年である。親日国で知られるトルコでは、2023年5月に大統領選挙でエルドアン大統領が再選を果たし、3期目の政権運営に入った。本稿では、EUや中東、北アフリカへのゲートウェイとしても魅力の高いトルコについて、近年の金融政策の変遷や足下のマクロ経済の状況を紹介し、同国の経済動向を概観する。トルコ中央銀行(以下、トルコ中銀)は2021年9月以降、景気拡大局面においても、継続的な利下げを行い、金融緩和政策を行ってきた。2022年はロシアによるウクライナ侵攻の影響で世界的にエネルギーや食料価格が上昇したが、そのような状況下においても、景気刺激を優先した金融緩和政策が続いた。そのため、同国は急激なインフレーションに悩まされている。(図1:政策金利、インフレ率、コアインフレ率)(%)大統領選挙後、エルドアン大統領は金融政策の変更を認めると表明し、トルコ中銀総裁に米国金融業界での経歴が豊富なハフィゼ・ガイ・エルカン氏を任命した。その後、トルコ中銀は大統領選挙前には8.5%であった政策金利*1を段階的に40%(2023年11月末時点)まで引き上げることを決定した。上述のとおり、伝統的な金融政策に舵が切られたものの、足下のインフレ率は依然として中銀目標*2を上回る水準で推移しているほか、政府による最低賃金の大幅引き上げもあり、コアインフレ率はインフレ率を上回る伸びで推移している。世界経済の減速懸念により、原油相場は頭打ちの動きを強めており、今後物価への下押し圧力が加わることが期待されるものの、トルコでは依然として実質金利がマイナスに留まっていることで投資妙味が乏しく、結果的にリラ安の動きに歯止めが掛かりにくい一因になっている、との見方がある。(図2:リラの推移)(ドル/リラ)トルコ中銀は2023年11月の金融政策決定会合の声明文において、「金利水準はディスインフレ軌道の確立に必要な水準にかなり近いと評価され、引き締めペースは減速するとともに、引き締めサイクルは短期間で終了する」という見方を新たに示し、利上げ局面の終了が近づいていることを示唆している。また、物価の動向について、「金融引き締めが内需(1)金融政策の変更(2)物価及び為替(トルコリラ)の動向(3)今後の金融政策1.はじめに2.近年の金融政策と今後の動き海外経済の潮流 148大臣官房総合政策課 渉外政策調整係 原 伸年 74 ファイナンス 2024 Feb.トルコ経済概観
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