ファイナンス 2024年2月号 No.699
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議を通じてサポートができるようになったのです。今までなら、そこに行かなければ、その人でなければ、できなかったことが、時間と空間を大きく超えられるようになってきました。もちろんこの他にも、いろいろなものを使って、リアルタイムに、テキストベースでも画像でも動画でも全部シェアをしながら、現場を確認できるようになってきています。今までできなかったことが本当にできるようになってきています。私たちがやりたいこと、それは「誰かと争い、何か奪い合って大きくなるのではなく、自ら価値を創り出し、成長していきたい」ということです。これまで順風満帆だったわけではありません。今、AIやロボティクスを使いこなしているマネージャーが、たかだか7、8年前までは堆肥を手で撒いていました。本当に昔ながらの農業そのものでした。想いがあれば、新しいカタチが創られていく、そう思っています。数年前にスケートの清水宏保選手(長野五輪スピードスケートで金メダル)とご一緒させていただく機会がありました。そのとき彼が言っていたのが「非常識も、結果を出せば常識に変わる」という言葉です。オランダで新たに開発されたクラップスケートというスケート靴(ブレードと靴の踵部分が離れる構造となっている)を履きだしたオランダのスピードスケートの選手が長野五輪を目前にして好成績を上げていました。清水選手は、履き慣れた従来の靴をあっさり捨てて、未経験のクラップスケートに乗り換えて、結果として、長野五輪でオリンピックレコードを更新して金メダルを取ったのです。清水選手が言った「クラップスケートはもうスピードスケート選手はみんなそれを履くようになっている。非常識も、結果を出せば常識に変わる」という言葉がとても印象的で、よく社内でも使わせていただいています。農業もScienceとTechnologyで大きく変わるのです。非常識も結果を出せば、常識に変わるのです。できっこないことでも、カタチになるとその時代の当たり前になっていく、と思っています。サラダボウルグループとして「次の時代の当たり前」を創っていきたいなと思っています。今、日本ではスマート農業という言葉がよく聞かれますが、世界的にはDigital farmingと言われています。Digital farmingによって、儲かる農業が実現するのです。儲かるというのは、社会に価値を生み出せることだと思っています。イ)生産者の待遇改善Digital farmingによって、働く人たちの待遇も変わってきます。サラダボウルグループの正社員が去年で33.2歳、おおよそ年収で500万円ぐらいです。普通に週休2日で、普通にボーナスをもらいながら普通に8時出社5時退社で1ヶ月の残業は大体10時間台で終わる、というごくごく当たり前の普通の仕事になってきました。これはもっともっと変わっていくのではないかと思っています。ウ)最先端産業に変貌先ほど見ていただいたように、AIやロボティクスもどんどん入ってきています。他の産業と比べて、農業は30年、50年遅れている、とずっと言われてきました。でも一番古い産業だからこそ、AIやロボティクスの活用により、そこのギャップを一気に飛び越えて新しくなりやすいと思っています。急速に農業が最先端の産業になれる、そういう素地があると思っています。エ)農業界への優秀な人材の流入そういう環境にあるので、サラダボウルにも本当に優秀な人たちが入ってきてくれるようになりました。新卒採用や第二新卒だけでなく、役職定年や定年退職した人たちも採用しています。そういった人たちにとっても農業がすごく魅力を感じてもらえるような時代になってきたな、と感じています。オ)地域のハブ産業へ7、8年くらい前だったと思いますが、農業界と経済界の連携事業という補助金があり、経済界の人に声(4)自ら価値を創り出し、成長していく(5)非常識も、結果を出せば常識に変わる(6)Digital farmingで変わることア)■かる農業 70 ファイナンス 2024 Feb.

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