ファイナンス 2024 Feb. 69 令和5年度上級管理セミナー(1)経験や勘でなく、データから正しく判断AI、ロボティクスも、どんどん現場に入ってきていますので、今までとは違うレベルでの経営管理もできるようになってきました。気象や栽培環境を計測するセンシングや、それを常に観察をして考察分析まで繋げるモニタリング、自動収穫ロボットや自動運搬ロボット、また収穫予測システム、そんなものがどんどん当たり前のようになってきました。(2)Digitizationから Digitalizationへその戦略を「生産設計」という言葉で定義をし、戦術を「生産管理」という言葉で定義をし、自分たちなりの「農業生産method」と「営業戦略」がマッチをすることでフードバリューチェーンの中で一翼を担えることができるのではないかと思い、今、事業展開しています。先ほど、一般的なこれまでの農業用のハウスでトマトを作ると、1,000m2あたり300万円ぐらいの売上であり、私たちの実績が大体2,000万円ぐらいです、という話をさせていただきました。特別なことをしているわけではありません。5分おきに計測される40項目を超える栽培データ、環境データをきちんと見て、どういうふうに管理をしていったらいいのかを正しく判断できることによって、光合成、水素発電の最大化ができるようになったのが、大きな理由です。今までは「経験と勘」と言われていましたが、こういう計測項目を見ると、例えると、真っ暗な夜空の中、目的地の空港に正しいコースを通って正しい時間で到着できるのと同じだと思うのです。目に見えない様々なデータや計測器を見ながら、自分たちが飛んでいるコース、飛んでいるスピード、あらゆるリスクを、全部アラート機能を見ながらやっていくのです。もちろん栽培環境というのは変化をしますけども、それに事前に備えながら、計画した生産量を生産し、それを販売に結び付けていくことができるようになってきました。外部委託先と一緒に開発をした収穫予測システムがあります。明日何キロ収穫できるのか、3週間後に何キロ収穫できるのか、それがどのスーパーにどれだけ分配されていくのか、そのスーパーのどこのお店にどれだけ届けばいいのか、が分かるのです。川上の情報がピン止めできるので、そこから正しい情報をどんどん連結できるようになっていきます。いよいよ農業界でも、デジタル技術によって既存の価値観や枠組みが根底から覆されるような革新的なイノベーションが、DXが起こるのではないかなと思います。これまではDigitization、すなわち業務の一部をデジタル化するだけでした。作業がデジタル化されただけです。でも経営そのものがデジタル化されていく、工程プロセスがデジタル化されるDigitalizationという段階に入ってきたな、と実感できるようになってきました。農業が本当に変わっていくのはこれからだろうと思っています。変化したところがやっと見え始めてきて、これからもっと大きく、みんなに多くの人たちに分かる形で農業が変わっていくのではないかと思います。私たちは、経営支援システムを独自で作っています。独自で作っていると言っても、例えば、会計、総務、労務、受発注といったものは全部既存の汎用的なものでできますので、自社開発はせずに、そういったものを使っています。一方、収穫予測システムや生産管理といった独自性が強い部分については、外部に委託する形で全部自社開発をしています。AIが私たちでも使える価格、使える環境にどんどんなってきましたので、栽培管理などの非常にコアな部分でも、これらを使いながら、ナレッジマネジメントもどんどん進んできています。それによって、これまでの農産物流通、フードバリューチェーンから大きく変わってきています。それらをさらにこれからも取り組んでいきたいと思っています。私たちは、今ではデイトレーダーが使うマルチモニターを導入し、そこに全国の農場の栽培データ、栽培環境データを全部繋ぎ、社員がモニタリングしています。私たちの中では、こういったことがもう既に3年前には当たり前になっていました。それで何が起こったかというと、山梨のベテランの栽培責任者が、岩手や兵庫のなりたての若手の栽培担当者に、毎日WEB会4.Digital farming(3)独自の経営支援システム
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