ファイナンス 2024年2月号 No.699
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ファイナンス 2024 Feb. 67 令和5年度上級管理セミナーマネジメントが必要になってきました。「コストマネジメント」で原価をどういうふうに改善しながら、どういうふうに価格形成をしていくかという「プライシング」が大きなテーマになってきました。それを実現するために「見える化」「人材育成」に注力する、という取組になってきます。「見える化」には大きく3つのテーマがあります。1年間どんな業務で成り立っているのかという「業務そのものの見える化」、その業務がどういうふうに進捗しているのかという「進捗の見える化」、数値でどのように見えるのかという「結果の見える化」です。こうして「データドリブンマネジメント」に非常に近づいてきました。「データドリブンマネジメント」は、以前は「ITマネジメント」と呼んでいましたが、現場のファクトをデータに置き換えながら、現場で起こっている事実を、正確に計測し、判断ができるようになって、本当に経営がしやすくなったと思っています。これらを実践するために社員のリテラシーをどう高めるかっていうことを一生懸命社員と一緒になってやっています。あとは「適正規模経営」、そして、経営リスクに対して「事業ポートフォリオ戦略」を組みながらやっています。最後になりますが、以前は「高付加価値化」と書いていましたが、今では「多付加価値化」としています。農業界では「高価格化と高級化」が高付加価値化だ、とすごく狭く捉えられすぎる側面があると思っていました。例えば、同じような市場に出ているものでも、7割のコストでできることも素晴らしい価値だし、1か月前から出荷ができて、2か月も長く出荷ができることも大きな価値だ、と考えるなど、もっと広い方向での価値創りができるのではないかと考えて取り組んでいます。昔ながらの農業地域の中で、なんら他の農業者の人たちと変わらない環境の中で、自分たちなりにマネジメントに取り組んできて、今、少し大規模に集約された農場運営を始めることができるようになってきました。山梨県北杜市に「アグリビジョン」という農場があります。横幅が200m、奥行きが150m、地面からハウスの一番高いところ、棟高で7m30cmぐらいありますので、かなり見上げるような大きなハウスになります。現在、北は岩手県大船渡市から南は福岡県みやま市まで11ヶ所の農場がございます。今年度だけで4ヶ所の農場が増え、また来年度も3ヶ所の農場の建設を計画しています。地域経済や地域ということが今日のテーマだと思いますので、普段はなかなか数字のところはお伝えしないのですけども、今日は少しだけお伝えさせていただきます。日本でお米を作ると、普通の流通の場合で、1,000m2当たりで10万円の売上があると言われています。一般的な従来型のハウスで、トマトを作ると、大玉のトマトで、大体年間300万円と言われていまして、ミニトマトで500万円ぐらいというのが一般的な売上と言われています。サラダボウルグループには全国に農場がありますけども、中玉のトマトとミニトマトを作っていますが、大体どちらも1,000m2当たり2,000万円ぐらいの売上になっています。自分たちでも少し驚くぐらい、ここまで生産性が変わるのです。ハウスの中は非常に清潔で、整然としています。大規模にやっても、作業の標準化ができたり、1年間、平準的に忙しさをできるだけコントロールすることができます。ですので、働く人たちの働き方も変わってきました。例えば、農場長やグロワーといわれる栽培責任者は、先輩が後輩を育て、後輩がまた次の後輩を育てる、それが当たり前にできるようになってきました。私たちの目指したい形の一つに、愛着を持って長く働き続けられる場を作っていく、というのがあります。今、パートだけで700人を超える方が全国で働いてくださっています。去年の数字ですけれども、そのうち50歳以上の人たちが71.9%、60歳以上ですと52.4%を占めています。80歳を超えた人も何人もいらっしゃるのです。よく(1)大規模で集約された農業経営(2)農業を地域に価値ある産業にする(3)熟練パートたちの力3.次のステージへ

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