れがされていて、治具も取り出しやすいように全部整理整頓されている。そんな取組を見たときに、「もしこんなことが農業でできたら、どれだけ農業は変わるのだろう」と自然に思うようになっていました。あるいはイタリアンレストランのチェーン店の社長さんから「ホスピタリティ」という概念を教えてもらって、こんなことに取り組んでいるのか、と驚くこともありました。もし農業でこんなことができたら、一体どんなことができるのだろう。そんなことをいろいろな業種、業態の社長や会社から見せていただいて、知らず知らずのうちに農業とオーバーラップさせて、農業をいろいろ考えるようになっていきました。またベンチャー企業の経営者の人たちがどんどん前に突き進み、想いをカタチにしていく姿も見ていました。そうした経験を積んでいくうちに、「金融機関として支援する側ではなくて、自らやってみたい、何かをやりたい」という想いが抑えきれず、その時には農業をやってみたいという思いが明確に強くなっており、2004年に退職をして、サラダボウルを創業しました。創業当時は応援どころか、「農業なんかが会社になるわけがない」「農業もやったこともないお前が何で農業をやろうと思うのか」等々、農業に近い人たちからは、私たちがやろうとすることを否定され続けたのです。設立当初から、会社のことや現場のことを毎日写真付きでコメントをつけて、当時まだ目新しかったブログで発信していきました。それを見て、早い段階からやりたい人が集まってきました。当時は農地を借りるのも非常に大変でした。まだまだ農業者が元気だったので、何を作ってもうまくいかないような、放っておかれた土地だけをやっとお借りできるような状況でした。ずっと黒字経営で今まで来ているのですけども、それは社員の給料が低く、365日24時間一生懸命働いてくれたからです。給料の半分は「夢」みたいな感じで、本当にやりたい人が来てくれて、脱落者を出しながら、気合と根性で残った人たちだけで支えてきました。それが創業当時の実情でした。(1)農業経営のためには何に取り組むべきかやる気があったり、本当に将来に対してガッツがあるうちはいいのですけど、だんだん将来は大丈夫なのか、とみんなも不安になってきます。(2)強い農業現場構築のためのキー・ファクターア)10個のキー・ファクター創業して3年ぐらいしたときから、「ただ頑張るだけじゃ駄目だ」となって、実はその時に初めて、先ほど少しご紹介をしましたが、金融機関勤務時代にいろいろな業種、業態の経営者の人から聞いた話を、自分なりにまとめて、「農業経営をする上で、何に取り組まないといけないのか」という、いわゆるマネジメントに取り組むということを始めました。サラダボウルの「強い農業現場を構築するための10のキー・ファクター」を紹介いたします。「マーケットクリエーション」「プロダクションマネジメント」「コストマネジメント」「プライシング」「見える化」「人材育成」「適正規模経営」「事業ポートフォリオ戦略」「データドリブンマネジメント」「多付加価値化」となります。イ)マーケットクリエーションが戦略の基本少しだけご紹介をさせていただくと、「マーケットクリエーション」というのは、バイヤーですら何を作ったら売れるかなんて分からない中で、とりあえず想定したものを、スーパーの棚に並べて、お客様の消費行動を見ながら「ちょっと量目が多すぎるんじゃない?」「ちょっと価格帯が高い?」「ちょっとデザインがこうなのかな?」「品種が合ってないかもしれない?」等々、要するに、お客様の答えに近づいていく取組を、スーパーのバイヤーの方々とやらせていただくようになってきました。分からない答えに向かって取組を継続していくという意味で、「マーケットクリエーション」が戦略の1丁目1番地になってきました。ウ)お客様が必要なものを作るためにそうすると、お客様が必要なものをどういうふうに作るのかという「プロダクションマネジメント」、生産工程管理や品質管理や労務管理、いろんな現場での(3)サラダボウル設立当初の状況2.マネジメントへの取組 66 ファイナンス 2024 Feb.
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