ファイナンス 2024年2月号 No.699
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ファイナンス 2024 Feb. 59 2023年日本議長下におけるG7財務大臣・中央銀行総裁会議の成果市場経済の信認を維持するためにも重要である。その際、GDPは、政策当局者にとって最も有用な指標の一つであり続けるものの、無料のデジタルサービスが反映されない等、その性質上様々な課題・限界があり、GDPのみで人々の多様な価値観を反映したウェルフェアを包括的に測定することは困難である。こうした問題意識から、日本議長下でのG7では、5月に開催した財務大臣・中央銀行総裁会議のサイドイベントにスティグリッツ教授を招聘するなど、有識者も交えた議論等を行い、政策立案者が多元的な指標を通じてウェルフェアを包括的に把握すると共に、それらの指標を政策立案に反映させていくことが重要であることなどの認識を共有した。また、12月には、1年間のG7における議論を取りまとめ、Presidency Note(議長ノート)を公表した。ノートでは、多様な価値を反映したウェルフェアを測定する上で有益な、GDPの限界への対応、GDP以外の多様な指標活用の重要性、将来世代への配慮、幅広いエンゲージメント、継続的な改善、の5つのアプローチを提示した。加えて、多様な指標を実際に政策立案に反映させていく上では、他国の取組から学ぶことも重要であることから、G7メンバーによる取組も紹介している。今後もこれらを踏まえつつ、ウェルフェアを追求する経済政策に向けた努力を継続することが重要であり、来年のイタリアによるG7議長下でも議論が継続される予定である。財務トラックにおいては、2023年5月11~13日において、G7の財務大臣及び中央銀行総裁、国際機関の長及びパートナー国6か国を新潟に迎え、会議を開催した。ウクライナのマルチェンコ財務大臣を招待し、ヴァーチャル形式での参加が実現した。新潟会合の詳細や開催までの道筋は「ファイナンス」令和五年七月号に寄稿しているため、是非参照されたい。新潟では3日間にわたり幅広い分野の議論を行うとともに、サイドイベントや、多様な価値を踏まえた経済対策のあり方を議論するためのランチセミナー、新潟の食文化を取り入れた夕食会等の開催や、地元の名物である花火の打上げなど、会議の円滑な運営と新潟の魅力の発信に努め、率直で活発な財務大臣・中銀総裁間の議論を実現することができた。(4)新興途上国・アフリカ諸国との連携気候変動・開発等のグローバルな課題に対処するためには、新興途上国を含めたグローバルな解決策が必要であり、G7としてパートナー国との関係を深化させていくことが重要である。この観点から、5月に新潟で開催したG7財務大臣・中央銀行総裁会議では、ブラジル(2024年G20議長国)、コモロ(アフリカ連合議長国(当時))、インド(G20議長国(当時))、インドネシア(2022年G20議長国)、韓国、シンガポールを招待したアウトリーチ会合を開催し、新興途上国が抱える課題等について対話を行った。また、10月にモロッコ(マラケシュ)で開催された世銀・IMF総会の機会に、G7-アフリカラウンドテーブルを開催し、G7各国、G20議長国(インド、ブラジル)のほか、アフリカ諸国(コモロ、ガーナ、モロッコ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、ザンビア)等を招待した。当会合においては、気候変動や食料不安等のグローバルな課題から特に打撃を受けているアフリカ諸国へ資金を呼び込むため、民間資金と公的資金の役割や、ビジネス環境を改善する改革について議論を行い、G7として、今後もアフリカ諸国と金融・経済面で更に協働していくことに合意した。(写真8)アウトリーチ会合(G7新潟)の様子デジタル化や気候変動といった構造的な変化の中、格差の拡大や持続可能性の欠如から、経済規模の拡大が必ずしも真の幸福につながっていないとの指摘がある。こうした中、経済政策がウェルフェアの向上に資するものとなっているかを再検証することが、民主主義や2.4. 多様な価値観を踏まえた経済対策:経済政策におけるウェルフェアの追求3. G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議の開催(2023年5月11〜13日)

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