ファイナンス 2024年2月号 No.699
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(写真7)鈴木財務大臣とIMFのゲオルギエバ専務理事の面会国間の協調体制を確立するため、17か国のパリクラブ債権国と非パリクラブ債権国が一堂に会して債務再編交渉を行う債権国会合を創設した。債権国会合において、日本は、インド、フランスとともに共同議長国として議論を主導し、非パリクラブ国からもインドのほか、オブザーバーとして中国、サウジアラビア、イラン等が参加し議論を進めてきた結果、11月にはスリランカ政府と債務再編条件についての基本合意に至っている。また、日本が主導し、世銀の保有する債務データと、債権国から共有された債権データとの突合に取り組んだ。G7のみならずパリクラブの同志国の参加を通じて、65億ドルのギャップを把握し、債務の透明性と正確性の向上に貢献することができた。(写真5)スリランカ債権国会合の発足に係るメディアイベント気候変動等の国境を越える課題への対応のため、世界銀行等の国際開発金融機関(MDBs)の機能強化に向けた改革(MDB改革)の議論も主導した。既存資本の最大限の活用に加え、G7は革新的な金融手法による資金動員にも貢献し、世界銀行で350億ドルを超える貸出余力の増加(そのうち日本は約60億ドルの貢献)の実現を見込んでいる。また、複合的な危機に対応するためには、グローバルな金融セーフティネットの中心であるIMFを通じた支援も重要である。IMFが配分する特別引出権(SDR)を活用した低中所得国支援については、日本が世界に先駆けて貢献率を引き上げたことで、世界全体で1,000億ドルの目標を達成した。また、IMFが低所得国を支援する貧困削減・成長トラスト(PRGT)の資金動員目標を達成し、10月にモロッコ(マラケシュ)で開催されたイベントにおいては、IMF専務理事より日本への謝辞が述べられた。その他、IMFクォータ(出資割当額)の50%増資を伴う第16次クォータ一般見直し(12月にIMF総務会で承認)や、IMF理事会におけるサブサハラ・アフリカからの理事の追加など、IMFの資金規模・機能・ガバナンス改革に貢献した。(写真6)鈴木財務大臣と世界銀行のバンガ総裁の面会(3)対外直接投資(FDI)FDIが新興途上国にもたらす雇用創出や現地の技能開発・技術支援、脱炭素化等のメリットに加え、FDIの経済安全保障上のリスク等を包括的に考慮することの重要性をG7で確認した。この問題意識を踏まえ、OECDは、新興途上国が「より多くの、より良い、安全なFDI」を受け入れるための支援戦略を策定した。支援戦略に基づき、OECDは、(1)持続可能性等のFDIの質の側面や、経済安全保障リスクへの配慮の側面等、包括的な観点からの支援を実施し、(2)東南アジア・アフリカ等への支援を深化・拡大させ、(3)地域における対話・取組の促進を実施していく予定である。(2)国際金融機関の強化 58 ファイナンス 2024 Feb.

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