ファイナンス 2024年2月号 No.699
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ファイナンス 2024 Feb. 57 (写真4) RISE(強靭で包摂的なサプライチェーンの強化)の立上げイベント2023年日本議長下におけるG7財務大臣・中央銀行総裁会議の成果また、各国の状況に則した最適な緩和策の採用に資するIFCMA(炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラム)や途上国のエネルギー移行を支援するJETP(公正なエネルギー移行パートナーシップ)などを通じても、気候変動対策を推進した。なお、インドネシア向けのJETPでは、日本が米国と共に共同議長を務めている。さらに、サステナビリティ開示について、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による2つの基準(全般的要求事項及び気候関連開示に係る基準)の最終化が支持されるとともに、人的資本を含むISSBの将来の作業に期待を示した。また、トランジション・ファイナンスは経済全体の脱炭素化を推進する上で重要な役割を有していることから、トランジション・ファイナンス促進のための方策について議論を深めた。自然災害リスクファイナンスの促進については、プロテクションギャップ縮小のためには民間・公的セクターの協調の強化が重要であるとの認識を共有し、これを踏まえてIAIS(保険監督者国際機構)が、OECDと連携して、自然災害リスクファイナンスに係る報告書を策定・公表した。(2)国際保健国際保健は新型コロナウイルス感染症の拡大以前から日本がその重要性を強く提唱してきた政策課題であり、日本議長下のG7でも積極的な議論を行った。5月には、オンラインでG7財務大臣・保健大臣合同会合を開催した。財務・保健における緊密な連携が重要であること等について議論し「財務・保健の連携強化及びPPRファイナンスに関するG7共通理解」を公表した。また、合同会合では、将来のパンデミックの予防(Prevention)、備え(Preparedness)、対応(Response)のうち、特に「対応」のためのファイナンス強化に関する議論を主導した。(3)経済のデジタル化経済のデジタル化は、様々な恩恵をもたらしているが、同時に新しい課題も生じており、これらに対応するためにG7でも様々な議論を行ってきた。まず、国際課税については、「二つの柱」の解決策の迅速かつグローバルな実施に向けた議論をOECDと協調して主導し、G7として途上国への実施支援の更なる提供にもコミットした。また、中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、世界中で検討・取組が急速に進展する中で、その導入がもたらしうる機会とリスクに途上国が適切に対処できるよう、「CBDCハンドブック」の作成を後押しした。「CBDCハンドブック」は、日本が主導し、CBDCの導入を検討する途上国向けにIMFが知見や経験を集約したものであり、10月に第一弾となる計5章が公表された。今後、全約20章が公表される予定である。暗号資産については、金融安定理事会(FSB)勧告等と整合的な形で規制監督の枠組みを実施することにコミットした。また、個人間で行われる取引(P2P取引)から生じるものも含め、マネロン等のリスクに関する作業を金融活動作業部会(FATF)に要請した。近年、低所得国を中心に、開発途上国の公的セクター(政府や政府系機関等)による海外からの借入が増加し、債務持続可能性への懸念が高まりつつある。これらの問題は、新型コロナウイルスを受けた財政支出の増加等により更に深刻化している。これに対応する観点から、G7として、低所得国向けに債務救済を行うための「共通枠組」の実施を強化するG20の取組をサポートし、ザンビアやガーナ等における債務措置の議論の進展にコミットしてきた。また、中所得国であり「共通枠組」の対象外であるスリランカについて、広範な債権2.3.途上国との協力・国際金融機関の強化(1)債務問題

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