ファイナンス 2024年2月号 No.699
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0.1ファイナンス 2024 Feb. 51 図表8 BEIとサーベイベースのインフレ予想指標の比較図表9 連動係数と物価連動国債のキャッシュ・フローの推移図表10 連動係数の時間を通じた動きブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)入門(出所)安達・平木(2021)より抜粋(出所)財務省連動係数1.11105円0.1クーポンは「連動係数×利率」で計算・・・10年(満期)110.46想定元本は「連動係数×100」0.11で計算時間10年(満期)時間も、BEIはサーベイベースの指標と比べて低水準で推移しているなど、その動向の評価には留意を要する」と指摘しています。ここから物価連動国債の元本を計算するうえで重要な概念である連動係数について説明します。物価連動国債は前述のとおり、満期に100円で償還されるわけではなく、物価で調整された想定元本で償還されますが、この想定元本は100円に「連動係数」をかけることで計算します。図表9の上図は、仮に毎年1%インフレが実現した場合の連動係数の推移のイメージを示しています。毎年のインフレ率が1%の場合、下記の形で、10年後の連動係数が計算できます。連動係数=1.0×(1+0.01)10=1.1046図表9の下図は期中のクーポンに加え償還時のキャッシュ・フローを示していますが、クーポンは「連動係数×利率」という形で決まるため、連動係数が上昇(下落)すればクーポンも上昇(下落)します。物価連動国債の元本は「連動係数×100」で計算されるため、100×1.1046=110.46という形で計算されます。上記では、インフレ率が毎年1%で10年間推移すると想定しましたが、実際にはインフレ率は時間を通じて変動するため、連動係数の動きも時間を通じて変化します。図表10が、コアCPIが変化した場合の連動係数の動きを示した一例です。連動係数は、この図表のようにインフレ率が上がれば1を上回りますし、デフレになれば1を下回ります。もっとも、償還時には100円を下回らないという商品性になっているので、図表10における(3)のパスのように償還時に1を下回る場合には、最終的に当該連動係数は1に切り上げになると解釈できます(フロアがあるため償還時は1が下限となります。ただし、期中・償還時を問わず、クーポンには100円のフロアがない点(図表10のとおり、1を下回ることはある点)に留意してください)。連動係数そのものは財務省のウェブサイトに掲載されていますが、ここではもう少し丁寧に連動係数を説明します。前述のとおり、連動係数そのものは1を基準としており、インフレが進めばその度合いに応じて1を上回るものと計算されますが(デフレが進めば連4.連動係数4.1 連動係数のアイデア4.2 連動係数はなぜ複雑になるのか

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