ファイナンス 2024年2月号 No.699
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?押上げ/ 下押し要因3.4 BEI以外の期待インフレ率の指標図表5 BEIと予測インフレ率を乖離させうる3つの要因図表6 ESPフォーキャストの質問票:予測値の主観的な分布CPI(生鮮食品を除く総合)上昇率図表7 期待インフレ率の指標調査名(出所)安達・平木(2021)より筆者作成(出所)増島・安井・福田(2017)名称物価連動国債の元本保証に対するプレミアム(2013年以降に発行された物価連動国債のみに発生)物価連動国債の低い流動性に対するプレミアム名目国債と物価連動国債の価格変動リスクに対するプレミアム(名目と実質のタームプレミアム)の較差元本保証 プレミアム流動性 プレミアムタームプレミアムの較差(例)x年度予想2023 予想2024 〃消費動向調査家計生活意識に関する アンケート調査ESPフォーキャストエコノミストコンセンサス・ フォーキャストBEI金融市場参加者インフレ・スワップ・レートQUICK債券調査全国企業短期経済 その他観測調査(日銀短観)(出所)日本経済研究センターより筆者修正内容BEIへの影響↑押上げ要因↓下押し要因・・・0<x≦0.2540公表元・入手先内閣府日本銀行日本経済 研究センターConsensus Economics社財務省・日本相互証券・BloombergBloombergQUICK日本銀行0.25<x≦0.50.5<x≦0.753020データ期間2004年4月以降日ごろよく購入する品目の価格2004年第1四半期以降物価(家計が購入する物や サービスの価格全体)2004年5月以降CPI生鮮食品を除く総合1989年10月以降2004年4月以降CPI生鮮食品を除く総合2007年3月以降2004年7月以降CPI生鮮食品を除く総合2014年第1四半期以降0.75<x≦1・・・10予想対象消費税率引上げの影響の有無消費税率引上げの影響を含む消費税率引上げの影響を含まない消費税率引上げの影響を含む系列と含まない系列を公表(ただし、2013年4月~9月は消費税率引上げの影響CPI総合消費税率引上げの影響を含む10年物国債の利回りから算出しており、長期の物価変動を示すと考えられることから、消費税率変更の影響は含まれないとみられるCPI消費税率引上げの影響を含む消費税率引上げの影響を含む物価全般消費税など制度の変更を含まない合計値100を含む系列のみ)前述のとおり、BEIは、物価連動国債と関係が深いことから、いわば国債の投資家の意見を強く反映した期待インフレ率を表しているともいえます。もっとも、期待インフレ率については、物価連動国債という資産価格から抽出するのではなく、アンケートにより消費者や投資家から直接意見を募ることも可能です。例えば、日本経済研究センターが毎月公表するESPフォーキャストでは、日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名に対して、日本経済の株価・円相場などについて質問票を送ることで、予測データを作成し公表しています。その中では、コアCPIの予測値についてもヒアリングしています。ESPフォーキャストでは、図表6のような形で、CPIの予測値の主観的な分布について各エコノミストの解答が集計され、公表されています。ESPフォーキャスト以外にも、いくつかの期待インフレ率の指標が存在します。図表7は期待インフレ率の指標の一覧を示したものですが、「家計」、「エコノミスト」、「金融市場参加者」という調査主体ごとに分類されており、それぞれの特徴が整理されています。前述のとおり、BEIにはフロア・オプションなどが含まれていることから、一定のバイアスを有しますが、投資家はこれらのデータを交互に参照しながら物価連動国債の投資を行っています。物価連動国債への投資という観点でいえば、物価連動国債は物価指数の中でもコアCPIを参照していますが、図表7の中にはコアCPI以外の物価指数を参照しているものがある点に注意してください(期待インフレ率をどのように測定するかに関心がある読者は、渡辺(2023)の3章なども参照してください)。図表8が、BEIとサーベイベースの期待インフレ率を比較しています。増島・安井・福田(2016)では、「流動性プレミアムなどの金融資産特有の要因により、BEIが市場参加者のインフレ予想から乖離しうる点に注意を要することが指摘されてきた」、「日本において 50 ファイナンス 2024 Feb.

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