ファイナンス 2024年2月号 No.699
51/104

3202/62202/42202/111202/90202/71202/29102/218102/019102/57102/88102/37102/15102/116102/65102/44102/24102/93102/72102/52102/211102/010102/81102/30102/18002/119002/68002/47002/27002/96002/75002/55002/214002/014002/3ファイナンス 2024 Feb. 47 図表3 物価連動国債から算出される実質金利(入札時)の推移ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)入門(%)2.01.51.00.50.0-0.5-1.0-1.5(出所)財務省旧型物価連動国債*6) 例えば、日本経済新聞(2023年1月28日)「日本の実質金利なお低迷」では、「日本の実質金利は物価連動債で算出する以上にマイナス幅が大きいとの見方も出ている。日本は長引くデフレで物価連動債の需要が低迷し、欧米に比べて投資家層が限られ流動性が乏しいという課題があるためだ」と指摘しています。*7) JYGGBE05(5年の物価連動国債)やJYGGBE10(10年の物価連動国債)がティッカーです。また、IBLEでBEIの期間構造をみることができます。*8) 昨今の物価連動国債の利率は低いため、分かりやすさを重視してクーポンを捨象して議論をしています。*9) 我が国では1年の物価連動債は発行されていませんが、ここでは説明の分かりやすさの観点から1年の物価連動国債の新発債を例として説明しています。新型物価連動国債どによりバイアスを有しているという見方もある点に注意してください*6。期待インフレ率には、年限と期待インフレ率の関係、すなわち、期間構造があるということを理解するのが大切です。期待インフレ率については、例えば、同じ2%のインフレ予想だとしても、1年間で平均2%となるのか、10年間で平均2%となるのか、という違いがあります。物価連動国債と名目債は実質金利と名目金利の期間構造を有するため、これを利用すれば、期待インフレ率の期間構造を推定することができます。例えば、1年の名目債の価格から名目金利を計算する一方、1年の物価連動国債の価格から実質金利を計算し、両者を用いてBEIを計算したとします。このBEIには向こう1年分のインフレ期待が反映されていると解釈されます。一方、10年の名目債から名目金利を取得し、10年の物価連動国債から実質金利を取得することでBEIを算出した場合、このBEIは向こう10年分の期待インフレ率の平均を示していることになります(繰り返すようですが、流動性やフロア・オプションなどの観点で厳密には期待インフレ率から乖離する点に注意してください)。BEIを見るときに気を付ける必要があるのは、どの年限の物価連動国債がBEIの計算に使用されたかが明示されない場合が少なくない点です。実際は、カレント銘柄(=物価連動国債の場合、10年債)で算出したBEIが用いられることが多い印象です。財務省のウェブサイトでBEIの時系列の推移が公表されていますが、これは物価連動国債のカレント銘柄の実質金利を計算したうえで、その銘柄と最も年限が近い10年の名目債の名目金利からそれを除くことで計算しています。なお、BloombergではBEIに関して各年限のティッカーを用意しています*7。BEIは期待インフレ率を測る指標として重要ですが、投資家がBEIを見て投資の判断をしている側面も重要です。BEIとは、将来のコアCPIがBEIと同じ水準を実現した場合、名目債と同じリターンを生むという解釈ができます。したがって、読者が将来のコアCPIがBEIを上回ると考えるなら物価連動国債をロング、下回ると考えるならショートという形で投資の判断ができます。例えば、1年の名目債の金利が0%であり、1年の物価連動国債の実質金利が-1%(単価が101円*8)としましょう(ここでは簡単化のため、この1年債は新発債と想定し、当初の物価連動国債の想定元本は100円とします*9。また、BEIが1%である点にも注意してください)。向こう1年間におけるコアCPIが1%上昇した場合、物価連動国債で運用すると、101円で購入したものが101円で償還されるため、物価連動国債のリターンは0%であり、名目債で運用した場合のリターンと同じ0%ということになります。しかし、向こう1年間でコアCPIが2%上昇した場合、102円で償還されるため、コアCPIが1%上昇した場合に比べて1%分より多く元本が増えるのですか3.BEIに関する発展的な話題3.1 投資指標としてみたBEI2.3 期待インフレ率の期間構造

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る