ファイナンス 2024年2月号 No.699
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内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官補佐(経済見通し担当) 古川 健令和6年1月26日に「令和6年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「政府経済見通し」という。)が閣議決定された。政府経済見通しは、翌年度の経済財政運営に当たって政府がどのような基本的態度をとるのか、及び、それを踏まえて経済はどのような姿になるのかを示した政府文書であり、内閣府が作成の上、財務省の税収見積もり、延いては予算の前提として用いられたのち、予算の国会提出と同時期に閣議決定されることで最終的に政府見解となる。今回の政府経済見通しでは、令和5年度の我が国経済は、半導体の供給制約の緩和等に伴う輸出の増加やインバウンド需要の回復等から外需がけん引し、GDP(国内総生産)成長率は実質で1.6%程度、名目で5.5%程度と見込まれている。令和6年度については、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11月2日閣議決定。以下「総合経済対策」という。)の進捗に伴い、個人消費や設備投資等の内需がけん引する形で、GDP成長率は実質で1.3%程度、名目で3.0%程度と見込まれる。本稿では、令和6年度政府経済見通しの具体的な内容について紹介する。GDPの内訳項目等の詳細な見通しについては、文末の表を参照されたい。1.政府経済見通しの位置づけ政府経済見通しは、政府による公式な経済予測であるのみでなく、今後政策的に実現を目指していく経済の姿を示しているということができる。これは、政府経済見通しが、足元の経済情勢を踏まえて翌年度の経済を予測するのはもちろんのこと、我が国政府が経済財政運営の基本的態度に基づき実行する各種の施策による効果を織込んでいるためである。すなわち、政府経済見通しは、(1)翌年度の経済財政運営に当たって、政府がどのような基本的な態度をとるのか、(2)そのような基本的態度に基づいて経済財政運営を行うことによって、経済はどのような姿になるのか、という2点について、政府の公式見解を閣議決定により表明する。他方、賃金上昇は輸入価格の上昇を起点とする物価上昇に追い付いていない。個人消費や設備投資は、依然として力強さを欠いている。これを放置すれば、再びデフレに戻るリスクがあり、また、潜在成長率が0%台の低い水準で推移しているという課題もある。このため、政府は、デフレ脱却のための一時的な措置として国民の可処分所得を下支えするとともに、構造的賃上げに向けた供給力の強化を図るため、令和5年11月2日に総合経済対策を策定した。その裏付けとなる令和5年度補正予算を迅速かつ着実に執行するなど、当面の経済財政運営に万全を期す。また、令和6年能登半島地震の被災者への生活支援及び被災地の復旧・復興を迅速に進める。こうした中、令和5年度の我が国経済については、GDP成長率は実質で1.6%程度、名目で5.5%程度、消費者物価(総合)は3.0%程度の上昇率になると見込まれる。2.令和5年度の日本経済(実績見込み)我が国経済は、コロナ禍の3年間を乗り越え、改善しつつある。30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、経済には前向きな動きが見られ、デフレから脱却し、経済の新たなステージに移行する千載一遇のチャンスを迎えている。 36 ファイナンス 2024 Feb.令和6年度 政府経済見通しについて

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