ファイナンス 2024年2月号 No.699
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(2)令和5年度補正予算のフレーム主計局総務課主計官 有利 浩一郎日本経済は、コロナ禍の3年間を乗り越え改善しつつある。30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、経済には前向きな動きが見られ、民需主導の持続的な成長とデフレからの脱却、成長と分配の好循環を実現するチャンスが訪れている。(参考)令和5年度の実質GDP成長率は1.6%程度、名目GDP成長率は5.5%程度と見込まれており、令和6年度はそれぞれ1.3%程度、3.0%程度と見込まれている。一方、財政状況に目を転じれば、日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応、最近の物価高騰への対応や累次の補正予算の編成等により、より一層厳しさを増している。財政は国の信頼の礎であり、責任ある経済財政運営を進めるにあたっては、経済あっての財政という方針に沿って、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要である。引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針2023」(令和5年6月16日閣議決定)等における2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出構造の更なる平時化を進めるなど、歳出・歳入両面の改革を着実に推進していく。昨年11月2日に、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」が閣議決定された。この経済対策は、低物価・低賃金・低成長に象徴される「コストカット型経済」から脱し、「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」に日本経済を移行させるためのものであり、令和5年度補正予算はこれを実行するために編成された(昨年11月29日成立)。令和5年度補正予算の歳出においては、経済対策の実行に係る経費として13兆1,272億円を計上している。このほか、国債整理基金特別会計への繰入れ、地方交付税交付金の増額等を行うとともに、既定経費を減額している。なお、新型コロナ・物価予備費について、その使途を変更し、「原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費」へと見直すこととしている。一方、歳入においては、租税等の収入について、最近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して1,710億円の増収を見込んでいる。また、税外収入について、7,621億円の増収を見込むほか、前年度剰余金3兆3,911億円を計上している。以上によってなお不足する歳入について、公債を8兆8,750億円発行することとしている。この結果、令和5年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計予算に対して歳入歳出ともに13兆1,992億円増加し、127兆5,804億円となる。また、令和5年度の公債発行額は44兆4,980億円となる。1. 令和5年度補正予算及び 令和6年度予算編成の背景2.令和5年度補正予算の概要(1)令和5年度補正予算のポイント 8 ファイナンス 2024 Feb.令和5年度補正予算及び 令和6年度予算について

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