ファイナンス 2024年1月号 No.698
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ファイナンス 2024 Jan. 4 しかし、こども・子育て政策の財源を確保できたとしても、日本の財政事情は既に厳しい状況にあり、毎年多額の借金に依存している現状を改善していかなければ、こども世代に負担を先送りしている構造を変えることはできません。とりわけ、近年、新型コロナや物価高騰への対応として、これまでにない規模の補正予算を編成し続けてきたことから、財政状況はより一層厳しさを増しています。令和6年度予算ではこうした状況を踏まえ、徹底した歳出の見直しを行いました。まずは、コロナ禍から平時への移行が進むなか、多額の予算を計上していたコロナ・物価予備費については、その役割を終えつつあることを踏まえ、思い切った削減を行いました。また、こども・子育て政策や防衛力の強化、科学技術振興など、社会課題の解決や成長力の強化に必要な予算については重点的な対応を行う一方で、重複投資の排除や長期契約の活用など、予算の適正化や効率化を通じた歳出抑制努力をあわせて行うことで、メリハリの効いた予算に仕上げております。こうした努力の結果、令和6年度予算の歳出規模や新規国債発行額は、対前年度比で減額となり、歳出構造の平時化に向けた一つの道筋を示せたのではないかと考えております。他方、歳入全体で公債に依存する割合が依然として3割を超えるなど、諸外国を見渡しても過去を振り返っても日本の財政状況が極めて厳しいことに変わりはありません。財政の悪化がその信認を傷つけ、ひいては国の信用が損なわれるようなことは何としても避けなければなりません。政府としては、2025年度のプライマリーバランス黒字化や債務残高対GDP比の安定的な引下げという財政健全化目標の達成に向け、今後とも気を緩めることなく歳出・歳入両面の改革に努めてまいりたいと考えております。最後に、財政を通じて展開される政策は、国民の皆様からの納税で支えられており、デジタル化などの環境変化が起こる中においても、納税者の皆様が適切に納税義務を果たすことができるよう、財務省・国税庁をあげて、引き続き納税環境の改善に努めてまいります。また、昨年10月にインボイス制度が開始され、制度の定着に向け様々な支援を行ってまいりましたが、今後とも施行状況をしっかりとフォローアップしつつ、丁寧かつ柔軟な対応を行ってまいります。の主な取組について申し述べてまいりました。本年7月には20年ぶりとなる改刷が予定されており、新しい一万円券の肖像には渋沢栄一、五千円券には津田梅子、一千円券には北里柴三郎が採用されることとなりました。幕末の開国という歴史的な大転換を迎えた時代にあって、経済、教育、医学の面で偉大な業績を残されたことに改めて敬意を表するとともに、バトンを引き継いだ現代を生きる日本人の一人として、期待される役割をしっかりと果たしていけるよう、本年も副大臣、政務官、そして総勢7万人からなる財務省職員とともに、一意専心、職務に励んでまいる所存です。本年が皆様にとって良い一年となりますよう祈念しまして、新年の挨拶とさせていただきます。4 結び以上、今後の経済財政運営についての抱負とそ

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