ファイナンス 2024年1月号 No.698
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算においても、災害復旧に加え、防災・減災、国土強靱化に予算を重点化いたしました。国土強靱化の取組による防災・減災の効果はこれまでも着実に発揮されてきており、災害に強い社会の実現に向け、引き続き必要な予算措置を行ってまいります。国外に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化などを背景に、世界や日本の安全保障環境は非常に厳しくかつ複雑化しています。こうした中で国民の生命と財産を守るべく、令和9年度までに43兆円規模の防衛力の整備を進めることとしており、令和6年度予算においても、統合防空ミサイル防衛能力の向上など、防衛力の強化を着実に進めることとしております。また、防衛力の強化のためには安定的な財源の確保が不可欠であり、まずは徹底した歳出改革などにより財源を捻出することとした上で、それでもなお足りない部分については、所得税、法人税、たばこ税による税制措置でお願いすることとしております。この税制措置については、令和6年以降の適切な時期に実施することとされておりますが、令和6年度予算では、決算で発生した剰余金を活用するなど、税制措置以外での方法により財源を確保することといたしました。さらに、国際社会が分断や対立の様相を呈している中においては、改めて国際協調の必要性を粘り強く訴えていく必要があります。昨年、日本はG7議長国として、ウクライナ支援やロシア制裁、途上国の債務問題や国際金融機関の改革をはじめ、世界経済が抱える様々な課題について議論を主導してまいりました。また、G7のような会議の場だけでなく、各国の財務大臣や国際機関のトップと膝詰めで議論を行い、様々な課題について個別の利害を超越した国際協調を図ってまいりました。加えて、日本の平和と安全や経済的な繁栄を確保するためには、経済安全保障の観点も見逃せません。例えば、自国産業の国際競争力の維持・向上に資する半導体などのサプライチェーンの強靱化に関わる国際協力銀行(JBIC)に対し、令和6年度財政投融資計画ではその支援を行うべく必要な資金を措置したところです。また、水際を担う税関においては、軍事転用のおそれのある製品や技術の流出につながる不正輸出の防止に引き続き取り組んでまいります。3つ目は、将来世代に豊かな経済社会を確実に引き継ぐことです。そのためには、日本が直面する最大の危機である少子化に対応していくことが不可欠です。2022年に生まれたこどもの数は77万759人と、統計を開始した1899年以来、最低となりました。若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでに少子化トレンドを反転できなければ、人口減少を食い止めることはほぼ不可能となり、豊かな経済社会を引き継ぐことも困難となります。岸田内閣では、こども・子育て政策を一丁目一番地の政策課題として様々な取組を進めてまいりました。昨年12月には「こども未来戦略」を決定し、児童手当の拡充をはじめ当面の集中的な取組である「加速化プラン」の規模を3.6兆円程度とするなど、こども・子育て政策を抜本的に強化しました。また、これだけ大きな予算を借金で賄い、将来世代にツケを回すのでは、こどものための政策としては本末転倒です。そこで、「こども未来戦略」では社会保障分野における徹底した歳出改革にも取り組み、政策実現に必要な安定財源を確保する枠組みについても決定しました。3  将来世代に豊かな経済社会を確実に引き継ぐ 3 ファイナンス 2024 Jan.

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