ファイナンス 2024年1月号 No.698
74/86

*13*14(Ⅱ)日本の取り組み【図表 中央アジア・コーカサス諸国】*13) 日本は、中央アジアの安定と発展には地域共通の課題の解決に向けた地域協力が不可欠との観点から、2004年に「中央アジア+日本」対話を立ち上*14) 河野大臣(当時)は、2018年9月に日本の外務大臣として初めてアルメニアとジョージアを、19年ぶりにアゼルバイジャンを訪問しました。コーカサス3カ国訪問の際に、日本は対コーカサス地域外交の考え方と具体的な協力方針を「コーカサス・イニシアティブ」として発表しました。これは、コーカサス地域を(1)アジア、欧州、中東をつなぐゲートウェイの潜在性、及び(2)国際社会の平和・安定に直結する戦略的重要性、の両方を備える地域として位置づけ、以下の2本の協力の柱を示したものです。〈協力の柱〉(1)「国造り」を担う「人造り」支援(人材育成)(2)「魅力あるコーカサス」造りの支援(インフラ、ビジネス環境整備)げました。現在では他の主要国も同様の枠組みを設けており、「中央アジア+日本」対話はこれらの先駆け的存在です。中央アジア・コーカサス諸国とは、中央アジア5カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)、コーカサス3カ国(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)を指します。ユーラシア大陸のほぼ中央部に位置し、古くはヨーロッパとアジアを結ぶシルクロードの拠点として物資の移動、文化交流が盛んに行われ繁栄しました。これらの国々は19世紀にロシアに併合された後、1991年のソビエト連邦解体を経て独立、日本は1992年9月までにこれら8カ国すべてと外交関係を開設しています。同地域は、共通の課題として旧ソ連時代の経済インフラの老朽化等のための人材育成、保健・医療などの社会システムの構築等の問題を抱える一方、国により差はあるものの、石油、天然ガス、ウラン、レアアース等の豊富な天然資源を有しており、様々な利害がぶつかり合う戦略的に重要な地域です。同時に、同地域は周辺を取り囲むロシアや中国等の大国の動向や、紛争など近隣諸国の情勢による影響を受けやすい地域でもあり、地政学的な要衝としてユーラシア地域全体の発展と安定に大きな意義を有しています。直近では、2022年のロシアによるウクライナ侵略の影響により、物流の制約を含め、経済的・社会的な影響を受けており、各国は対応を迫られています。現在日本としては、中央アジア・コーカサス地域の自由で開かれた持続可能な発展に向けた様々な協力を行っています。日本は、中央アジア・コーカサス諸国の課題解決に向けた取組を支援するため、インフラ整備、人材育成、保健・医療を始めとする基礎的社会サービスの再構築など多様な分野で支援を行っています。特に、中央アジア諸国との関係では、2004年から「中央アジア+日本」*13対話を立ち上げ、自由で開かれた国際秩序を維持・強化するパートナーである中央アジアの平和と安定に寄与することを目的とした域内協力を促進しています。また、コーカサス諸国との関係では、2018年に発表した「コーカサス・イニシアティブ」*14に基づき、基本方針として(1)国造りを担う人造り支援、(2)インフラ整備やビジネス環境整備を通じた魅力的なコーカサス造りのための支援、を協力の2つの柱としています。2023年9月に米国バイデン大統領と中央アジア5カ国首脳との間で、安全保障、経済及びエネルギー面でのパートナーシップを通じた協力強化で一致するなど、世界的に中央アジアへの注目が高まる中、上川外務大臣がカザフスタンのヌルトレウ副首相兼外務大臣と会談し、脱炭素化やエネルギーの分野で中央アジア各国との連携強化について協議しました。現在日本は、これまで閣僚級で実施していた「中央アジア+日本」対話を、2024年に初の首脳会合として実施することを念頭に、中央アジアとの関係強化に向けた取組を進めています。 69 ファイナンス 2024 Jan.【コラム】日本と中央アジア・コーカサスとの関係(Ⅰ)中央アジア・コーカサスとは

元のページ  ../index.html#74

このブックを見る