ファイナンス 2024年1月号 No.698
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ファイナンス 2024 Jan. 2 足元では明るい兆しも見え始めています。昨年、日本経済は30年ぶりとなる高い水準の賃上げや過去最大規模の設備投資を実現し、コロナ禍で過去最大となった50兆円にも及ぶGDPギャップは解消しつつあります。物価や賃金は上がらないという意識は確実に変化してきており、このような変化が起こりつつある今こそ、デフレ脱却への歩みを大きく進めなければなりません。昨年11月には、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を策定し、その裏付けとなる令和5年度補正予算を編成しました。具体的な方針として、まずは目の前の物価高騰にしっかりと対策を講じていくこととしております。一昨年来、値上げのニュースが頻繁に聞かれるようになり、消費者物価は3%前後と、高い水準で上昇が続いております。こうした物価高が家計や企業の過度な節約につながり、デフレ脱却のチャンスの芽が摘まれることがあってはなりません。そこで、生活必需品である燃料油、電気・ガスの価格抑制措置を春まで延長するとともに、とりわけ物価高の影響が大きい低所得者世帯に対し、1世帯あたり10万円の給付を実施することとしました。また、デフレ脱却のために何よりも重要なことは、持続的な賃上げの実現です。賃金上昇率から物価上昇率を差し引いた実質賃金は1年半以上もマイナスが続いており、賃上げの力強さをより高めていく必要があります。令和5年度補正予算、そして昨年末にとりまとめた令和6年度予算では、賃上げ促進に向けた様々な支援策を盛り込んでおります。例えば、中堅・中小企業向けには省力化・効率化投資への支援を行うとともに、下請けGメンの増強などを通じ適切な価格転嫁を図ることで、賃上げがしやすい環境を整備してまいります。また、医療、介護、障害福祉、保育士、教職員などの分野における賃上げについても、処遇改善のために必要な予算措置を行ったところです。さらに、令和6年度税制改正では、賃上げ促進税制を抜本的に強化し、赤字の中小企業にとっても使い勝手がよい仕組みにするなどの工夫を行いました。このように、賃上げに向けた環境整備に全力で取り組んでまいりますが、それでもなお、私たちの心に染みついたデフレマインドを払拭し、賃上げが物価高を超える状況を実現できるかは確実ではありません。そこで、幅広い方々の可処分所得を直接的に下支えすることで、思い切った消費につなげていただくべく、令和6年度税制改正で所得税・住民税の定額減税を講じるとともに、関連した給付を行うこととしております。加えて、賃上げの原資となる付加価値を継続的に高めていくためには、企業の投資意欲を後押しし供給力の強化を図ることが不可欠です。具体的には、フロンティアの開拓、GX・DXなどを強力に推進すべく、例えば、令和6年度税制改正ではイノベーションボックス税制を創設し、無形資産投資を後押ししてまいります。また、戦略分野国内生産促進税制を創設するなど、電気自動車、半導体などの戦略分野で過去に例のない措置を講じることで、全国規模で大型投資を呼び込んでまいります。2つ目は、国民が安心して生活できる社会を構築することです。能登半島における地震や台風6号・7号などの自然災害が、日本全国の広い範囲に深刻な傷跡を残しました。南海トラフ地震、首都直下地震などの発生も懸念される中、激甚化・頻発化する自然災害から国民生活を守り抜くためには事前防災が不可欠です。令和5年度補正予算、令和6年度予2  国民が安心して生活できる社会を構築する

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