ファイナンス 2024年1月号 No.698
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*1) 文中、意見に及ぶ部分は全て筆者の私見である。*2) 財務総研国際交流課は、国際交流室として1992年7月に発足し、2015年7月の機構改正により国際交流課と名称変更され現在に至る。*3) BFAとは、ウズベキスタンの金融・財政・税務行政各分野の政策運営等を国際的水準に引き上げることを目的として、1996年5月の大統領令に基づき設立され、各部門の専門家の育成のためのプログラムを実施。現在、ウズベキスタン政府や金融機関等より選抜された幹部候補生等が、主に1年間の修士課程を履修。なお、BFAは、以前は財務省(現在は経済財務省)の直下にあったが、2019年よりNBU(「国立対外経済活動銀行」、経済財務省の直下に位置する国立商業銀行)傘下へと所管が変更。*4) アゼルバイジャン、アルメニア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、タジキスタン、トルクメニスタンの8カ国。財務総合政策研究所 総務研究部 国際交流課 国際交流専門官 上田 大介同 企画交流係長 白石 達也同 研究員 武本 啓佑総務研究部 連絡調整係 係員 浅井 麻初はじめにこのところ、米中対立、ロシアのウクライナ侵略など近年の国際情勢の緊迫化が進む中で、中央アジア・コーカサス諸国への注目が集まっていますが、財務総研は同地域向けの知的支援を1997年から継続して実施しています。1.これまでの取り組み(1)中央アジア・コーカサスセミナーの歴史財務総研・国際交流課は、1992年の発足以来*2、途上国を対象とした知的支援活動を行ってきましたが、中央アジア・コーカサス地域向けの支援の一つとして、同地域の財務省等の若手幹部候補生を日本に受け入れる「中央アジア・コーカサスセミナー」を毎年8月~9月に開催しています。本セミナーは、日本の財政及び経済に関する知識・経験を提供することを通じ今月のPRI Open Campusでは、本セミナーの歴史や最近の動向を紹介するとともに、本セミナーへ最大の参加者を派遣するウズベキスタン金融財政アカデミー(Banking and Finance Academy 、以下「BFA」)のKhoshimov院長や、本セミナーで長期にわたり講師を務めていただいている上田衛門先生(慶應義塾大学教授)、アンドラディ久美先生(元・横浜国立大学准教授)にインタビューを実施し、本セミナーに対する思いなどを伺いました。て、対象国の人材育成を支援する事を目的として長きにわたり継続していますが、その起源は1997年まで遡ることができます。1991年のソビエト連邦の崩壊に伴い独立したウズベキスタン共和国は、同国の財政金融分野の政策運営等を国際的水準に引き上げる事を目的として、1996年10月、ウズベキスタン金融財政アカデミー(Banking and Finance Academy、以下BFA*3)を設立させました。ウズベキスタン政府から支援を求める強い要請を受けた当時、カリモフ大統領は、段階的に混乱のない市場化を目指すため、日本からの支援を受ける強い方針を示し、このことがハミドフ蔵相(当時)やアジモフ銀行協会会長(当時)からの熱心な日本への支援要請に繋がりました。これに対して、財務省の千野忠男元財務官(当時。故人)及び榊原国際金融局長(当時。現、青山学院大学教授、(財)インド経済研究所長)の強いイニシアチブの下で中央アジアの支援に注力していく方針が示され、財務総研(当時は「財政金融研究所」)は、同機関への支援の一環として1997年にBFAの学生を対象とした「BFA夏期セミナー」を開始しました。このBFA夏期セミナーは、開始当初(1997年)から2005年までの間は、BFAの学生のみを対象として実施していましたが、2006年からはより広範な人材育成に資することを目的として、参加対象者を中央アジア・コーカサス地域各国*4の財務省等の職員にまで拡大しました。(同時に名称を現在の「中央アジア・コーカサスセミナー」に改称)。その後、ウズベキス27 63 ファイナンス 2024 Jan.中央アジア・コーカサスセミナー*1

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