ファイナンス 2024年1月号 No.698
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どんな人でも、長所があれば、欠点もあります。その多くは表裏一体の関係になっているでしょう。欠点を減らしていくことは大事なのですが、時間がかかります。むしろそれを認めて助けを求めた方が集団としてはうまくいくケースも少なくありません。「自分の弱みは何か」を見つめてみてください。そしてそれをメンバーに知ってもらいましょう。b.分からないことは「分からない」と言う2つ目は、分からないことは「分からない」と言うことです。マネージャーが「分からない」と言えないと、メンバーはもっと言いにくいはずです。c.メンバーの長所を探し、褒める3つ目は、メンバーの長所を探し、それを褒めることです。メンバーの良さを知ることができれば、マネージャー自身が謙虚になれます。マネージャーが自分の欠点を明らかにすることは、メンバーにとって話しやすい環境を作り出すために重要です。ぜひ取り組んでいただきたいと思います。ウ)強いリーダー像を捨て、集団の利益を優先マネージャーは自分を評価する存在であり、メンバーによっては「怖い」とさえ感じることでしょう。これには、「マネージャーは弱さを見せず、強くあるべきだ」とマネージャー自身が考えてしまっていることが関係していると思います。マネージャー自身が優秀であることは大事です。ただし、チーム全体がうまくいく方がマネージャーの本来の職責です。自分が弱さを見せることによって、メンバーが意見を出しやすくなって、パフォーマンスが高まるとすれば、それは実践していくべきでしょう。弱さといっても、すべてを見せる必要はありません。部分的に見せるだけでも親しみが湧きます。また、「この職場では、そういうことも許される」と思えて、メンバーが前向きに仕事に取り組めます。エ)マネージャーが自身の失敗体験を共有するでは、どういうふうに欠点や弱みを見せていけばいいのでしょう。具体的な方法を2つお伝えします。1つ目です。自分の「モチベーショングラフ」を書いてみてください。キャリアの中でモチベーションが高かった時期もあれば、下がってしまった時期もあるはずです。職業人生には山があれば谷もあります。横軸に年齢、縦にモチベーションの高さを置いて、グラフを書いてください。そして、「モチベーショングラフ」をメンバーに見せましょう。その上で、モチベーションが下がったときに何があったのかを語ります。オ)経験から学んだことを関連付けて語る2つ目です。自分の仕事上の失敗を列挙してみてください。そして、それぞれから得た教訓もあるはずです。失敗と教訓を整理し、メンバーに見せてください。そうすると、メンバーも「自分も多少の失敗をしても大丈夫だ」と思えます。心理的安全性を高めるための2つ目のアプローチが、「インクルーシブ・リーダーシップ」です。これは、メンバーの意見やニーズをオープンに受け止めるリーダーシップのことです。イ)3つのことが必要インクルーシブ・リーダーシップを発揮するために必要なことが3つあります。a.メンバーの意見に耳を傾ける1つ目が、メンバーの意見に耳を傾けましょうということです。「私はちゃんと耳を傾けている」と思った方もいるかもしれません。しかし、メンバーからしたらどうでしょうか。傾聴を普段から意識し、積み重ねていただければと思います。例えば、会議で発言しない人や若手に話を振ってみてください。意見が得られたら、そのことを褒めます。意見を言ってくれてありがとう、と承認することが大事です。対面の場だとなかなか意見を言いにくい場合にも、メールやチャットなどを活用できます。b.定期的な意見聴取、相談しやすい環境実際に意見を言えるような機会を定期的に作っておきましょう。例えば、会議の最後の5分間はメンバーの意見を聞く時間にするなど、ルールを決めておくの(3)インクルーシブ・リーダーシップア)メンバーの意見を受け入れる 59 ファイナンス 2024 Jan.

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