ファイナンス 2024年1月号 No.698
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2023(注)FMSは、米国の武器輸出管理法などのもと、米国の安全保障政策の一環として同盟諸国などに対して装備品を有償で提供するものである。202220212020201920182017201620152014三菱電機IHI富士通川崎重工業三菱重工業ゼネレル・ダイナミクスレイセオンノースロップ・グラマンボーイングロッキード・マーチン(図表3)新たな防衛力整備計画の (図表6)FMSによる装備品等の取得にかかる予算額の推移(契約ベース)(図表2)軍事費シェア推移(図表5)撤退や事業撤退を表明した 主な企業財源確保策(US$:B)(US$:B)120100806040200(出所)第一生命研究所「世界軍事費ランキング2022、ウクライナ情勢と日韓逆転」、SIPRI「SIPRIMilitaryExpenditureDatabase」、財務省「令和5年度予算のポイント」(注)ライセンス国産:国内企業が外国政府及び製造元である外国企業か許可を得て行う国内生産(出所)日経ビジネス電子版「防衛タブー視のツケ静かに消えていく企業」、防衛省「令和5年度防衛白書」、朝日新聞「防衛産業、相次ぐ大手の撤退 防衛費増額の陰で進む・2022年の世界の軍事費は過去最高の2兆2398億ドルで8年連続の増加し、上位15か国を合計すると世界の82%を占めている。米国は8769億ドルで世界シェア39.7%と引き続き1位である。日本の防衛費はGDP比1%程度で安定的に推移してきたが、円安の影響を受け米ドルベースでは大幅減少し、1990年の6位から2022年は10位にまで後退した(図表1、2)。・日本の安全保障環境が厳しさを増す中、2023年以降における防衛力の抜本的な強化及び防衛力の安定的な維持に必要な財源を確保するための「防衛財源確保法」が2023年6月に成立し、今後の防衛費の増額が決定されている。防衛力整備の水準にかかる総額は43兆円程度の名目値とされており、物価上昇や為替変動の影響も含めたものとなっている(図表3)。(図表1)軍事費ランキング上位15か国・日本の防衛産業は民間に依存しているが、防衛省と直接契約を行う企業の1部門が防衛事業を担っており、主要事業とはなっていない上、諸外国と比べ防衛事業の利益率が低位と言われている(図表4)。企業は防衛事業の維持に関し、株主や金融機関等の企業内外の利害関係者の理解が得にくいとされる他、少量多種生産や装備品の高度化・複雑化により調達単価及び維持・整備経費が増加傾向にあるという問題もある。この20年で防衛産業から撤退する企業が増えており、100社超の企業が撤退したとも報じられている(図表5)。こうした状況の中、FMSによる装備品の取得が高水準で推移している(図表6)。・防衛装備品のライセンス国産は国が製造ライン等にかかる初度費を負担した上、ライセンスフィー等の付加的な経費を上乗せすることから、FMS・一般輸入より割高であるとの見方もある。一方、防衛装備品は主に有事に使用されるため、修理点検がしやすい、技術のアップデートも円滑にできる等の理由により、国内で防衛装備品を調達すべきとの見解もある。(図表4)日米主要企業内における 防衛産業の規模と割合「不都合な真実」」0(2022年)200400600米国中国ロシアインドサウジアラビア英国ドイツフランス韓国日本ウクライナイタリアオーストラリアカナダイスラエル防衛事業8001,000米国50454035302520151050199019952000200520102015202020212022(注)1990年のロシアの数値はソビエト連邦の数値を使用非防衛事業2019年2020年ダイゼルパイロットの2021年2022年企業コマツ装備品軽装甲機動車撤退緊急脱出装置撤退表明三井E&S造船艦艇の製造事業譲渡住友陸自向けの重機械工業横河電機機関銃操縦席用ディスプレー事業譲渡輸送機用の油圧機器撤退表明KYB中国ロシア韓国撤退日本防衛力整備の水準:43.0兆円程度2.5兆円程度(防衛力整備の水準の予算総額:40.5兆円程度(A+B)歳出追加需要:14.6兆円程度(A)4.6~5兆円強3.5兆円程度3兆円強R55.2兆円(注)イメージ図であることに留意25.9兆円(B)(億円)16,00014,00012,00010,0008,0006,0004,0002,0000達成のための様々な工夫)8.9兆円程度1兆円強税制措置防衛力強化資金(仮称)0.9兆円程度0.7兆円程度1兆円強決算剰余金の活用歳出改革R9防衛産業の昨今の外部環境防衛産業の抱える課題大臣官房総合政策課 伊藤 恭平/胡桃澤 佳子本稿では、国内防衛産業の現状と課題について考察する。コラム 経済トレンド115 51 ファイナンス 2024 Jan.国内防衛産業の将来

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