ファイナンス 2024年1月号 No.698
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ファイナンス 2024 Jan. 50 *9) 輸出額及び輸入額は「Exportação e Importação Geral」(出典:開発工業貿易サービス省)、直接投資額は「Investimento direto no país (IDP) – Posição – Participação no capital」(出典:ブラジル中央銀行)の数値。画を策定し、同計画に基づき各事業者へ排出量の上限となる排出枠(CBE)を配分するほか、市場の管理や価格安定等を担う。常設技術諮問委員会はSBCEの改善に関する勧告等を提示する。SBCEにおいては、CBEとSBCEの枠組の下で認可された排出削減証書(RVE)が取引される。既存のボランタリー市場で取得したカーボンクレジットは、一定の条件の下においてRVEとみなされる。また、GHGの排出及び削減に関する報告義務といったSBCEの規制対象となるのは、CO2換算で排出量が1万トン以上/年の事業者。2.5万トン以上/年を排出する事業者に対してはより厳格な規制が適用される(排出量に相当するCBE及びRVEの所有義務に関する報告書の提出)。遵守できない場合は最大で総収入の5%の罰金が科される。1万トン未満/年の事業者はボランタリーで参加が可能となる。その他、農畜産業等は規制の対象外となる。移行期間においては、関連規則の制定、事業者による排出報告の運用化やモニタリング計画の提出などが必要で、当該法律の成立からSBCEの稼働開始までには3年以上を要する見通しとなっている。以上、簡単ではあるがブラジル経済と主要経済政策の一部についての概要を紹介した。最後に、ブラジルと日本との経済関係を貿易と投資の面から見てみたい。ブラジル側からみた統計*9では、日本との輸出入総額は2011年においては約173億米ドル(貿易相手国第5位)であったが、2022年では約119億米ドル(同第10位)、また日本からの直接投資額は、同じく2011年においては約332億米ドル(対内直接投資全体の約6%)であったが、2021年では約215億米ドル(同約3%)となっており、2国間の経済的な結びつきは必ずしも深まっているとは言えないかもしれない。一方、ブラジルとの経済関係の強化は、幅広い分野を通じて、日本経済の成長に資すると考えられる。前述したとおり、ブラジルには豊富な天然資源、再生可能エネルギー、農畜産物、そして旺盛な消費意欲を持つ2億人の人口が存在する。また、地政学的リスクが比較的低いことも注目すべき点ではないかと考えられる。現下の国際情勢の下においても、天然資源や農畜産物の安定的な供給源となることが改めて確認されている。そして、経済への足かせとなってきた複雑な税制や財政懸念に対する改革の進展を通じ、ビジネス環境の改善も期待できる。さらに、ブラジルには200万人以上に及ぶ日系人コミュニティが存在し、その方々と先人達の努力を基礎に、日本への敬意と親しみを抱いてくれている。筆者も日本とブラジルの経済関係の強化に少しでも貢献していければ幸いである。

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