ファイナンス 2024年1月号 No.698
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年)、金利は6.5%となった。財務省によれば、投資家からの大きな関心が集まり需要は高く、非居住者の参加者も多かった模様で、落札者の75%が北米及び欧州を占め、25%はブラジルを含むラテンアメリカであった。現時点では以下3種類のサステナブル国債を発行することが出来るが、将来的にはサステナビリティリンクボンドの発行も想定されていると指摘されている。・グリーンボンド:調達資金は環境にプラスとなる支出に限定して充てられる。・ソーシャルボンド:調達資金は社会にプラスとなる支出に限定して充てられる。・サステナビリティボンド:調達資金は環境及び社会政策の組合せへの資金調達及び借換えに限定して充てられる。適格支出(Eligible Expenses)は、年次の政府予算の中で規定される必要があり、対象となるプロジェクトカテゴリー(Eligible Project Categories)は、グリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクトで、それぞれ以下のとおり。・グリーンプロジェクト(環境にプラスとなるプロジェクト):汚染の防止及び管理、再生可能エネルギー、エネルギー効率、クリーン輸送、生物自然資源及び土地利用に係る持続型管理、陸上及び水生生物の多様性の保全、持続可能な水資源及び廃水管理、気候変動への適用、環境適応製品・環境に配慮した生産技術及びプロセス。・ソーシャルプロジェクト(社会にプラスとなるプロジェクト):社会経済の発展とエンパワーメント、食料保障と持続型食料システム、雇用の創出、必要不可欠なサービスへのアクセス、基礎インフラへのアクセス。前述のCFSSは連邦政府機関で構成される常設の合議体で、財務省(国庫局(CFSSの議長となる)及び経済政策局)や環境・気候変動省を含む10の省庁(農務省、科学技術・イノベーション省、農業開発・家族農業省、開発・福祉・家族・飢餓対策省、開発・産業・貿易・サービス省、統合・地域開発省、鉱山エネルギー省、企画予算省連邦予算局)の代表者で構成される。CFSSの主な責務には、サステナブル国債発行の計画や実施、枠組の運用に対する監視、報告等、透明性の確保等がある。サステナブル国債を通じて調達した資金の割当にあたっては、CFSSを構成する省庁は、枠組で定められた「調達資金の使途」の基準やカテゴリーについて、それぞれの年次予算における支出との整合性や適格性を裏付けるために必要な情報を提供する。さらに、枠組の「透明性と影響」に沿って、環境的・社会的な便益を監視することについての実行可能性を示すデータも提供する。これらの情報に基づき、CFSSは対象となる支出を選定し、サステナブル国債のポートフォリオを決定する。その後、CFSSは選定された支出の使途を監視し、適格基準および除外基準(大規模インフラ建設や人権侵害に関連する活動等)との整合性を監督する。これらの基準に違反した支出は、CFSSの決議によりサステナブル国債のポートフォリオから除外される。このような場合、CFSSは当該支出を、枠組で示された基準を満たす他の支出と入れ替える。現在、ブラジルのカーボンクレジット市場については、企業が自主的に設定した温室効果ガス(GHG)排出削減目標に沿ってカーボンクレジットを取引する、いわゆるボランタリー市場は存在するが、対象企業にGHG排出量削減義務を課した上で、排出枠やカーボンクレジットを取引するコンプライアンス市場が存在しない。このため、政府は、気候変動国家計画や国連気候変動枠組条約でのコミットメントに基づき、GHGの排出を制限するため、キャップ・アンド・トレード方式によるブラジル温室効果ガス排出量取引システム(SBCE)の創設に関する法整備を図っている。この法律により気候変動に関する省庁間委員会、SBCE管理組織、常設技術諮問委員会が設置されることになる。気候変動に関する省庁間委員会は、SBCEの総則の策定や国内配分計画の承認を行う。SBCE管理組織は対象事業者の排出量の上限等を設定する国内配分計【サステナブル国債のための枠組の概要】【法案の概要】 カーボンクレジット市場の法整備 〜環境に強みをもつブラジル、カーボンクレジット市場の法整備に着手〜 49 ファイナンス 2024 Jan.

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