ファイナンス 2024年1月号 No.698
53/86

生態系変革計画ファイナンス 2024 Jan. 48 *7) ブラジル議会では、憲法修正案の承認には議席の3/5の賛成が2回必要となるが、補完法であれば過半数の賛成で足りることから税率の変更に対する難易度が下がる。*8) 「Arcabouço Brasileiro para Titulos Soberanos Sustentaveis」数値については今後補完法で規定されることになる*7。・標準税率:関係者はCBSとIBSあわせて27.5%となる可能性を示唆。・軽減税率:標準税率の40%、公共交通、医薬品、医療、教育、農産品、文化等に関連する消費が対象。・専門サービスに対する税率:標準税率の70%。医師、弁護士、会計士といった個人が行うものが対象。・ゼロ税率:がん治療、障碍者向けの医療用機器や医薬品、基礎的な食料品(豆や米等)等が対象。(3)税制度の変更に伴う影響を緩和するための各種基金も創設されることが規定されている。・地域開発基金:連邦政府の財源が原資で地域開発を目的する資金となる。・税制優遇補填基金:連邦政府の財源が原資で、既存の税制優遇を受けている企業の損失を補填する基金(2032年まで)。その他、今後制定される補足法において、アマゾナス州をはじめとする北部州の持続可能な開発や経済発展を目的とする基金が創設される。(4)付加価値税導入までの移行期間は以下のとおり。・CBS:2026年に部分的に導入され、2027年に全面導入される。・IBS:2029年から2032年まで部分的に導入され、2033年には全面的に導入される。・新たな税制に伴う、州・市等における税収額の変化については2029年から2078年の50年間にわたって徐々に調整される。(5)上院案には税率の見直しに関する規定が盛り込まれている。2012年から2021年における平均税収やGDPを基に税負担の上限を算出。2030年においては2027年と2028年の税収が、また2035年においては2029年から2033年の税収が、その税負担の上限を上回った場合には適用税率の見直しが行われる。「世界の肺」と称されるアマゾン熱帯雨林を擁し、電力の80%以上が水力発電や風力発電を中心とする再生可能エネルギーで賄われているブラジルにおいて、ルーラ政権では環境関連政策を重視。その中で、財務省が中心となり、持続可能な経済を目指す一環として「生態系変革計画(Plano de Transformação Ecológica)」が策定された。この計画では「バイオ経済」、「循環型経済」、「エネルギー移行」、「技術の高密度化」、「気候変動適応インフラ」、「持続可能なファイナンス」、という6つの軸が設定されている。このうち「持続可能なファイナンス」に関しては、サステナブル国債の発行に向けた枠組が策定され、アダッジ財務大臣をはじめとする財務省関係者が海外投資家への説明を実施。2023年11月に海外市場で発行された。また、温室効果ガス排出量取引市場の法整備についても議会で審議が行われている。この2点について簡単ではあるが概要を紹介したい。2023年9月、財務省はサステナブル国債の発行に関する規定をまとめた「サステナブル国債のための枠組*8」を発表。この枠組には、政府予算に計上された環境や社会に対して好影響を及ぼす政策(プロジェクト)への支出のための、サステナブル国債の発行に関するルールが示されている。また、10の関係省庁で構成されるソブリン・サステナブル・ファイナンス委員会(CFSS)による作業のほか、米州開発銀行及び世界銀行の支援も受けており、国際資本市場協会(ICMA)が定めた原則を満たした内容となっている。11月には、米国市場においてサステナブル国債を発行。発行額は20億米ドル(約100億レアル、期間は7〜サステナブル国債の発行を通じて環境や社会に好影響を与える政策の原資を調達するため、国際基準に沿った発行枠組を策定。〜枠組 サステナブル国債発行についての

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る