ファイナンス 2024年1月号 No.698
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0 【図表4】公的債務残高(対GDP比)の推移(%)120100806040202015(出典)IMF/WEO database 2023_Oct20142016201720182019202020212022新興国ブラジルが抑制されていると、中央銀行の独立性への疑義にも言及して度々批判を行っている。2023年7月には、金融政策委員会(COPOM)のメンバーである金融政策担当副総裁に前財務省筆頭次官を据える等、中銀に対する政府側の影響力を強めようとする動きも伺えるが、現在のところは極端な政策変更は見込まれていない。第3次ルーラ政権発足前の2022年12月、政権移行チームは、低所得者層への給付金制度であるボルサファミリアの給付金額の確保をはじめとする、公約実現のための予算措置を講ずる憲法修正案を策定。財政支出の拡大に繋がるものではあったが、その中には、持続可能な財政を実現するための新しい財政枠組に関する法案の議会提出を義務付ける規定も設けられていた。これを受け、財務省及び予算企画省は2023年3月末に新たな枠組を公表、議会での承認を経て8月末に公布された。新枠組は2024年予算案から適用されている。IMFの統計によれば、ブラジルの公的債務残高(対GDP比)は約80%台で、新興国との比較では高い水準となっており(図表4参照)、財政の持続可能性や投資促進の観点からも財政状況の改善が求められている。既存の財政枠組は、2016年に導入された歳出上限(Teto de Gastos)と呼ばれるもので、歳出の増加率をインフレ率に留めるものであった。歳出の増加を実質ゼロにするという厳しいルールであったため、経済成長に見合った歳出が困難であるとの批判も上がっていた。また、その上限を超えた支出を可能とするための憲法修正が度々行われるなど、規律として形骸化し、財政の見通しに対して懸念が生じていた。現政権で策定された新たな枠組においては、インフレ率だけでなく、歳入の増加率やプライマリーバランス(PB)の目標の達成度合いも考慮して、歳出の増加率を算出することとなる(図表5参照)。歳出の増加率は、事前に設定された直近のプライマリーバランス目標値(対GDP比、許容範囲±0.25%ポイント)〜歳出の増加率を、歳入の伸びや財政目標の達成度合いも考慮して決定する新たな枠組へ。但し、より踏み込んだ取組を求める声も。〜 新たな財政枠組 (Arcaboço Fiscal) 45 ファイナンス 2024 Jan.

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