ファイナンス 2024年1月号 No.698
48/86

(出典)実績値:ブラジル地理統計院の公表値から筆者作成、2023~2024年の見通し:IMF/WEO2023Oct【図表1】実質GDP成長率の推移と見通し(需要項目別)(成長率(年次は前年比、四半期は前期比):%、寄与度:%ポイント)8.06.04.01.81.22.00.0▲2.0▲4.0▲6.0201820195.0▲3.3202020212.93.11.5202220232024家計消費政府消費総固定資本形成1.4▲0.1Q42022Q1純輸出在庫及び誤差GDP成長率1.00.1Q22023Q3パンデミックが発生した2020年の実質GDP成長率は前年比▲3.3%の落込みを記録した。政府による給付金支給策やブラジル中央銀行による政策金利の引下げをはじめ、財政及び金融面で景気の下支えを講じた。パウロ・ゲデス経済大臣(当時)は、先進各国に比べてGDP成長率の落込みが緩やかであった点を強調していた。2021年以降はパンデミックからの回復過程における、対人サービスの再開や失業率の低下といった労働市場の改善のほか、低所得層への給付金制度の拡充を背景に、消費を中心に堅調に推移している。2021年は同+5.0%、2022年は同+2.9%とプラス成長となり、2023年については、これまでのところ好調な農業や工業、インフレの落着きによる消費の増加を背景に、事前予測を上回る成長率(1Q:同+1.4%、2Q:同+1.0%、3Q:同+0.1%)となった ブラジル経済の概観 (図表1参照)。IMF世界経済見通し(2023年10月版)では、2023年については同+3.1%の成長が見込まれており、名目GDP(米ドル建て)では世界で上位9番目の経済規模に浮上する見通しとなっている。その一方で、高水準にある金利(2023年12月会合後時点の政策金利は11.75%)による企業投資や家計の耐久消費財購入への下押し圧力、給付金制度に支えられた消費の持続可能性、財政の持続可能性、そして最大の貿易相手国である中国の成長鈍化による影響を懸念する声も上がっている。金融政策については、ブラジル中央銀行は物価動向に合わせて政策金利(SELIC金利)の変更を通じて迅速な対応を見せていると考えられる。2019年7月以降、政策金利を継続的に引き下げている段階にあったが、パンデミックが深刻化すると2020年5月には引下げ幅を75bpに拡大(通常は25~50bp)させ、同年8月には2.0%まで引き下げて景気の下支えを試みた。その後、パンデミック収束に伴う需要の回復や国内の天候不順を背景に、物価上昇率はインフレターゲットを上回って推移し始めた。これに対しブラジル中央銀行は、2021年3月には利上げに着手。2021年後半にはエネルギー価格の上昇に起因して、インフレ率が10%を超えて推 〜パンデミック後、労働市場の回復や給付金制度の拡充に支えられた消費に牽引され、経済は堅調に推移。一方、依然として高水準の金利が投資や消費に及ぼす影響や、最大の貿易相手国の中国経済の減速による影響が懸念点。〜 43 ファイナンス 2024 Jan.

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る