ファイナンス 2024年1月号 No.698
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2023202220212020201920182017201620152014201320122011201020092008200720062005ファイナンス 2024 Jan. 34 物価連動国債入門ー基礎編ー(出所)財務省3.02.52.01.51.00.50.02004*6) 2015年以降は原則、年間1銘柄でのリオープン発行となっています。*7) 旧型物価連動国債はコンベンショナル方式で発行されたことがあります。具体的には、2007年8月、2008年2月、2008年8月の計3回のリオープン債はコンベンショナル方式で発行されました。また、旧型物価連動国債は2006年8月、2007年2月、2007年8月、2008年2月、2008年8月の計5回リオープンされていますが、当初2回はイールド・ダッチ方式、残りの3回がプライス・コンベンショナル方式で発行されています。図表5 物価連動国債の発行額および市中発行額に占める割合(兆円)3.5発行額カレンダーベース市中発行額における割合3.0%2.5%2.0%1.5%1.0%0.5%0.0%また、物価連動国債から算出されたBEIには流動性プレミアムが含まれる点にも注意が必要です。BEIを計算するうえでどの年限の物価連動国債を用いるのかという論点もあります。これらについては紙面の関係上、次回以降の論文で議論します。前述のとおり、物価連動国債は2004年に導入されましたが、2008年の金融危機で一時的に停止され、その後2013年に再開されました。図表5が国債発行計画における物価連動国債の発行量の推移ですが、物価連動国債の発行は国債発行全体に対して小規模にとどまっています。2004年に発行が開始されて以降、増加傾向にあったところ、金融危機時に発行が停止され、2013年以降発行が再開されるものの、コロナ禍で発行が減少して今に至ります。物価連動国債の発行回数は3か月に1回と、発行頻度も抑えられています(通常の2年から30年債は毎月、40年債は2か月に1回の発行です)。また、物価連動国債は原則リオープンです(リオープンについては服部(2023)を参照してください)*6。物価連動国債は、他の名目債と同様、入札を通じて発行されています。入札方法の重要な特徴は、2004年から原則ダッチ方式が用いられている点です*7。入札の方式については服部(2023)や石田・服部(2020)を参照していただきたいのですが、日本国債の入札ではコンベンショナル方式とダッチ方式が併用されており、40年国債および物価連動国債はダッチ方式、それ以外はコンベンショナル方式が用いられています。物価連動国債についてダッチ方式が用いられる背景には、40年債と同様、他の国債に比べて投資家の層が限定的であるなど、流動性の懸念があることなどが指摘できます。40年国債はイールド・ダッチ方式が用いられていますが、物価連動国債については、プライス・ダッチ方式が用いられています(イールド・ダッチ方式については服部(2023)を参照してください)。プライス・ダッチ方式とは、ダッチ方式で入札を実施するものの、入札の参加者は、「金利」でなく「価格」で応札するという入札です。例えば、入札ではプライマリー・ディーラー(Primary Dealers, PD)を中心に札をいれますが、PDは例えば10億円分の物価連動国債について100.01円という価格で応札します。物価連動国債の導入当時は、入札の方式としてイールド・ダッチ方式が用いられていました。プライス・ダッチ方式になった背景として齋藤(2013)は、再開時における物価連動国債の金利がマイナスであることから、表面利率をマイナス金利とすることはできず、「プラスの表面利率を国の側で設定した上で入札参加者は妥当と考える価格を入札する価格入札方式を新発債・リオープン債ともに採用するとされた」(p.36)と説明しています(表面利率が決まって、入札を実施する具体例については次節で説明します)。物価連動国債の特徴は、買入消却(バイバック)も定期的に実施されている点です。買入消却とは、財務省が入札を実施して、既発の国債を市場から買い入れる政策です。債務管理リポートでは、「現在では、恒常的な需給の不均衡が生じているという見方や流動性プレミアムが拡大しているといった指摘を踏まえ、需給改善や流動性向上を目的として物価連動国債の買入3.2 物価連動国債の入札3.物価連動国債発行の実際3.1 物価連動国債の発行量3.3 買入消却の仕組み

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