ファイナンス 2024年1月号 No.698
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ファイナンス 2024 Jan. 32 図表2 物価連動国債のキャッシュ・フロー図表3 2000年代になされた商品性の多様化TB1年物の公募入札開始30年債の公募入札開始5年債の導入15年変動利付債の公募入札開始中期債の5年債への統一(4年債・6年債の発行を取止め)ストリップスの導入個人向け国債(変動金利型)の導入物価連動国債の導入新型個人向け国債(固定金利型)の導入物価連動国債入門ー基礎編ー1999年4月9月2000年2月6月2001年4月2003年1月3月2004年3月2006年1月*3) 齋藤(2013)では、物価連動国債の発行の再開に向けた変化が見られたのは2012年としており、この背景として、「1つは、発行停止の状態をこのまま続けていると、わが国物価連動国債の市場が投資家から完全に見放されるおそれがあるという危機感である」、「もう一つは、発行を再開しようとしても直ちに再開できるわけではなく、あらかじめ準備を進めておく必要があったという点である」(p.33-34)としています。また、齋藤・服部(2023)で、齋藤前理財局長は「当時はデフレ環境下でしたから、物価連動国債もそこまでニーズが強かったわけではないですね。ただ、国債の基本的な品■えとしてあった方がいいということになりました。マーケットの物価上昇に対する予想というか期待インフレ率、いわゆるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を計測するという意味でも、物価連動国債があった方がいい」(p.28)というコメントをしています。(出所)財務省(出所)財務省資料より抜粋す)に連動するようになっており、利子額および償還金額が物価に依存する商品性になっています。日本政府が出している物価連動国債は10年債になりますが、この背景には、短い年限の国債だと、インフレリスクをヘッジする意味が薄れることなどがあります。我が国における物価連動国債は、2000年代における国債の商品性の多様化の中で、2004年に導入されました。図表3を見ると、この時期に、例えば5年債や30年債など様々な商品が導入されていることが確認できます。もっとも、2008年の金融危機時における暴落を踏まえ(その詳細はBOXを参照してください)、変動利付国債と共に、物価連動国債の発行は一時的に停止されます。その後、2013年に物価連動国債の再発行がなされますが、その際には元本保証が付されるなど、商品性が一部変わりました。物価連動国債が再発行された背景には、先進国では物価連動国債の発行が普及していることに加え、物価連動国債の発行により期待インフレ率の測定が可能になることなどがあります*3(ちなみに、市場参加者は元本保証の付された2013年以降の物価連動国債を「新型物価連動国債」、それ以前の物価連動国債を「旧型物価連動国債」と表現します)。前述のとおり、物価連動国債は利子や元本が物価に連動する点が特徴です。物価連動国債では、物価指数の中でも、生鮮食品を除いた全国消費者物価指数(Consumer Price Index, CPI)がその対象になっています(生鮮食品は価格の変動が大きいことから、生鮮食品を除いた指数が用いられています)。ちなみに、生鮮食品を除いた全国消費物価指数をコアCPIと呼びますが、コアCPIは、日銀の物価目標でも用いられています。そもそも物価指数は、財・サービス等の価格を捉える指数であり、消費者物価指数以外にも様々な物価指数が存在します。例えば、企業が直面している物価を測る企業物価指数などですが、多くの物価指数があるところ、物価連動国債では、生鮮食品を除いた消費者物価指数2.2 物価連動国債の導入の経緯2.3 消費者物価指数

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