ファイナンス 2024年1月号 No.698
33/86

ファイナンス 2024 Jan. 28 2023年IMF・世界銀行グループ年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要今回のG20は、2023年7月13、14日にガンディーナガルで開催された会議に続く、インド議長下における4回目の大臣・総裁級の会議となった。初日のMDBsセッションにおいては、MDB改革について議論を行った。2日目のセッションにおいては、世界経済の諸課題及び暗号資産等に関して議論が行われた。本セッションでは、日本を含む多くの国が、ウクライナとの連帯を改めて表明するとともに、ロシアを最も強い言葉で非難した。日本からは、モロッコ・アフガニスタンの地震及びリビアの洪水の被害者に哀悼の意を表し、イスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突に対する深刻な憂慮を表明した。加えて、ロシアによる侵略戦争の影響などにより世界経済の回復は緩やかなものにとどまる中、我が国では総合経済対策の策定に取り組んでいること、また、世界的に金融引き締めが継続される中、為替市場を含め、金融市場の変動が高まるリスクに留意すべきであり、為替相場の過度な変動は望ましくなく、場合によっては適切な対応を求められることもある、との立場を発信した。会合では2022年2月以来7回ぶりに全てのメンバーの合意による共同声明が採択された。共同声明では、ウクライナにおける戦争が世界経済に悪影響を与えていることなどを含むG20ニューデリー首脳宣言の文言(核兵器の不使用を含む)が盛り込まれた。世界経済については、最近のショックに対する強靱性が示される一方、引き続きリスクは下方に傾いているとの認識を共有した。その上で9月のG20サミットで首脳から求められた為替政策を含む政策行動とアプローチについてのコミットメントを再確認した。MDB改革については、より良く、より大きく、より効果的なMDBsを実現するための首脳からの要請を再確認し、既存資金の効率的な活用の更なる実施をMDBsに要請するとともに、増資の必要性、タイミングは各MDBの理事会で決定するのが最も適切との考え方を確認した。また、限られた譲許的資金を配分するための明確な枠組みに沿った形で、世界銀行の能力を押し上げるための更なる資金余力と譲許的資金を共同で動員することも合意された。債務問題については、低中所得国の債務問題への対処の重要性が強調された。「共通枠組」の下でのザンビア及びガーナの債務措置に関する進展を歓迎するとともに、スリランカの債務状況の適時の解決に向けた進展を歓迎し、可能な限り早期の合意を要請した。また、債務の透明性向上に係る取組を歓迎した。金融セクターについては、「IMF‐FSB統合報告書」で提案された暗号資産についてのロードマップをG20として採択するとともに、ノンバンク金融仲介(NBFI)の強靭性向上のためのFSB等の作業への支持を表明した。このように、今回のG20において、ますます複雑化する国際情勢にもかかわらず、多くの論点について建設的な議論を交わし、インド議長下での様々な主要論点について合意を見いだせたことは有意義であったと思われる。年次総会の終盤である10月13日から14日にかけては、国際通貨金融委員会(IMFC)が開催され、日本からは鈴木財務大臣と植田日銀総裁が出席した。IMFCは、国際通貨及び金融システムに関する問題について、IMF総務会に助言及び勧告を行う役割を持ち、各IMF理事選出母体から1名ずつ選出された24名の大臣級委員から構成されている(日本の委員は鈴木財務大臣)。IMFCは通常春と秋の年2回開催され、本会合は、4月に米国ワシントンDCにて開催されたものに続く今年2度目の会合である。会合では世界経済の動向やIMFの果たすべき役割等について議論が行われた。日本からは、世界経済への認識や為替に関する日本の立場のほか、世界経済が複合的な危機に直面する中、IMFをその資金規模、機能、ガバナンスの観点から強化するための改革の必要性を主張した。また、IMFは低所得国に対して譲許的貸付を行う基金である貧困削減・成長トラスト(PRGT)を通じて途上国支援を行っており、日本は、その取組を支援すべく、SDRチャネリングを最大限活用し、譲許的融資に必要となる利子補給金について、約4.1億ドルの追加貢献を行うことを表明した。これにより、2021年7月に設定された世界全体の利子補給金調達目標の20%を超えるシェアとなり、同目標の達成に大きく貢献した。2  G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2023年10月12〜13日)3  国際通貨金融委員会(IMFC) (2023年10月13日〜14日)

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る