ファイナンス 2024年1月号 No.698
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国際機構課長 木原 大策/係長 舟木 健/係員 西﨑 恵理奈開発機関課長 津田 尊弘/係長 片山 周一国際調整室長 齊藤 郁夫/係長 山﨑 健人開発政策課参事官 城田 郁子/係長 磯崎 聡(2023年10月12日)2023年10月11日から10月14日にかけて、モロッコ・マラケシュにおいて、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・IMF 合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された。これらの会議は、第78回世界銀行グループ・IMF年次総会に合わせて開催されたものである。一連の会議は、今なお続くロシアのウクライナに対する侵略戦争や本年10月7日に勃発したイスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突によって世界経済の抱える課題が強く認識される中で行われた。以下本稿では、各会議での議論の概要を紹介したい。日本が議長を務め、対面形式でのG7を開催した。今回のG7においては、ウクライナのマルチェンコ財務大臣の対面での参加を得て、ウクライナ支援等について議論を行い、会議後、議論の成果をまとめた共同声明を発出した。以下、発出された共同声明の概要について紹介したい。まず、国際情勢に関連して、ハマスによるイスラエル国に対するテロ攻撃を断固として非難し、イスラエル国民との連帯を表明する点が確認された。ロシア対応・ウクライナ支援については、ウクライナに対する揺るぎない支援を再確認するとともに、ロシアのウクライナに対する侵略戦争を非難することで結束した。また、ロシアがウクライナの長期的な再建の費用を支払うようにする取組を続け、それぞれの法制度と国際法に整合的に、ウクライナ支援のためのあらゆる可能な方策を探求することで一致した。加えて、引き続きウクライナの短期資金ニーズに対応し、ウクライナの復旧・復興を支援することにコミットするとともに、凍結されたロシアの国家資産を保有する民間事業者において、特別な収入が凍結資産自体から発生している場合、その収入をウクライナ支援に向け得る方策を探求することに合意した。その他、低・中所得国がクリーンエネルギー関連製品のサプライチェーンでより大きな役割を果たせるよう協力するパートナーシップ「RISE」(後述)について、成功裏の立上げを歓迎し、その実施を今後も支援することを確認した。G20における取組への関与等に関しては、債務問題について、「共通枠組」の実施を強化するG20の取組を引き続き支持するとともに、スリランカの債務措置の合意に向けた債権国会合での大きな進展を歓迎し、その迅速な解決への期待を表明した。また、国際開発金融機関(MDBs)が既存資本の活用のための努力を継続することを強く求め、地球規模課題への対処・最貧国への支援のために、世界銀行において更なる資金余力と譲許的資金を共同で動員することを確認した。IMFクォータ見直しについては、本年末の期限までに増資を伴う見直しが完了するよう最大限の努力を継続することに合意した。為替については、過度な変動は望ましくないといった合意を再確認した。上記の通り、日本が議長国としてリードしてG7間で率直な議論が行われた結果、多くの成果が得られたものと考えている。1  G7財務大臣・中央銀行総裁会議 27 ファイナンス 2024 Jan.2023年IMF・世界銀行グループ年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要

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