ファイナンス 2024年1月号 No.698
26/86

(図 財政制度等審議会「令和6年度予算の編成等に関する建議」(概要))基本認識・我が国の経済・社会は構造的な変化に直面しており、依然として歴史的な転換点に立っていると言える。海外と同様、我が国でも物価高や金利上昇の常態化というこれまでとは異なる局面に入っていく可能性があり、利払費急増のリスクも念頭に置きながら、責任ある財政運営を行っていくことが一層重要。・経済が平時化する中にあって歳出構造を平時に戻していくことは当然のこと。その際、将来を見据えた財政措置を制度改革等と合わ・少子化対策は国家の持続可能性を左右するといっても過言ではなく、長期的・継続的に実施する必要があり、そうである以上、財源も安定的に確保することが不可欠。世代間・世代内の公平性を確保し、全ての世代が相互に支え合う全世代型社会保障制度を構築し、あらゆる世代の将来不安を取り除いていく必要。1.経済・市場動向・新型コロナの位置づけが5類感染症に変更されたことに伴い、個人消費、企業活動含めて我が国の経済情勢は平時に戻り、更に一・グローバルな経済・金融環境においては、低インフレ・低金利基調から高インフレ・金利上昇基調へという経済の潮目の変化が継続。我が国でも物価は依然として上昇傾向、金利は長期債・超長期債を中心に一層上昇傾向。有し、財政健全化に向けた取組を推進。・金利上昇に伴い利払費が急増し、そのために国債を増発するようなこととなれば、市場の信認がさらに揺らぎ、国債発行に当たって追加のリスクプレミアム(国債金利上乗せ)を求められることになりかねない。そうなれば、財政運営に支障を来すおそれがあるほか、我が国の事業会社や金融機関などの資金調達にも悪影響を及ぼし得る。また、有事において機動的な対応ができるようにするためにも、常に財政余力を確保していくことが求められる。・令和6年度予算については、財政健全化目標の達成に向けた道筋を示し、経済・財政運営に対する市場の信認を確保するとの覚悟を持って編成に臨むことが求められる。物価・金利動向など我が国の経済の現況に鑑みれば、今がまさに財政健全化に軸足を移すべき時であり、この機会を逃してはならない。1.社会保障・「こども未来戦略方針」に基づき、安定した財源を確保した上で着実に実施すべき。具体的には、徹底した歳出改革等を行い、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す。歳出改革等による財源確保、経済社会の基盤強化を行う中で、支援金制度を構築する。2.地方財政・一般財源総額実質同水準ルールを着実に実施し、引き続き歳出改革等の努力を行っていくことが必要。・自治体DXを通じた業務効率化・歳出削減を推進するとともに、経費の削減効果について地方財政計画にも反映させるべき。・こども・子育て政策の強化について、既存施策との関係整理や枠計上経費の組み替えによる財源確保も検討すべき。・近年の地方税収等の増収傾向などを踏まえれば、当初計画にない財政需要について、まずは地方公共団体が基金の活用等によって対応することを検討すべき。・ふるさと納税に関する折半ルール適用や地方財政計画への計上の在り方について検討を進めるべき。せて講じ、民間主導の経済成長を実現できる環境を整えていくことが政府の重要な役割。部ではコロナ禍以前の水準を超えて経済活動が活性化。・労働市場では人手不足が顕在化。今後とも労働供給制約に直面する可能性が高いことを踏まえれば、労働生産性の向上が急務。2.経済財政運営の在り方・IMFは、本年4月のレポートで、各国政府は財政余力の構築により重点を置くことが必要等と提言。主要先進国は、こうした認識を共・現在の経済情勢の下では、財政措置は真に必要で効果的な施策に的を絞って講じる必要。同時に、単に現状維持志向の政策ではなく、将来を見据えた財政措置を制度改革等と合わせて講じ、企業・個人の行動変容や産業の新陳代謝などを促すことが望ましい。・能力に応じて負担し、必要に応じて給付し、持続可能な制度を次世代に伝える「全世代型」への制度改革が必要。(少子化対策)(報酬改定:医療・介護・障害)・高齢化等による国民負担率の上昇に歯止めをかけることが必要。ー約2万2千の医療法人を対象に実施した財務省の機動的調査で判明した診療所の極めて良好な直近の経営状況(2022年度経常利益率8.8%)等を踏まえ、診療所の報酬単価を適正化すること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当ー診療所の報酬単価については、経常利益率が全産業やサービス産業(経常利益率3.1~3.4%)と比較して同程度となるよう、5.5%程度引き下げる。これにより、保険料負担は年間2,400億円程度軽減(現役世代の保険料率で▲0.1%相当。年収500万円の場合、年間5千円相当の軽減)その上で、現場従事者の処遇改善に向けて、毎年生じる単価増・収入増を原資とすることを基本としつつ、利益剰余金の活用、強化される賃上げ税制の活用、その他賃上げ実績に応じた報酬上の加算措置を検討すべき。・介護分野の職場環境の改善・生産性向上等に取り組むべき。(改革工程)・全世代型社会保障に向けた改革について、医療提供体制、保険給付範囲の在り方、能力に応じた負担の観点から検討が必要。令和6年度予算の編成等に関する建議(令和5年11月財政制度等審議会)I:総論Ⅱ:各論 21 ファイナンス 2024 Jan.

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る